2026年2月2日(月)

Wedge REPORT

2026年2月2日

 「物価の優等生」と言われてきた卵の価格が高騰している。昨年12月には、「エッグショック」と呼ばれていた2023年の価格を上回る最高値を記録。今年に入っても、JA全農たまごMサイズ基準値で1キログラム当たり310円(1月29日現在)、小売価格も10個入りで300円前後といまだ高値だ。

(arissa/gettyimages)

 要因として、高病原性鳥インフルエンザが挙げられているが、飼料や人件費の高騰といった影響も受ける。

 生産者としては、鳥インフルエンザによって供給がままならなくなることは死活問題だが、感染が拡大し需給バランスが崩れ、価格が乱高下することも経営体力を削ぐものとなる。卵高騰の裏には、養鶏産業が抱える構造的な脆弱さも見えてくる。

被害は低くとも卵は足りない

 「2022~23年シーズンには鳥インフルエンザが大発生し、1800万羽を殺処分した。昨シーズンは930万羽、今シーズンはそれに比べると被害は少ないが、卵は今の方が足りないくらいだ」。日本養鶏協会の齋藤利明会長は現状を指摘する。

 鳥インフルエンザは、昨年10月22日に北海道で初めて発生して以来、1月27日までに13道府県で18事例の発生が確認されている。殺処分対象羽数は現時点で約423万羽と前年を下回る水準だが、渡り鳥の北帰行が終わる5月初旬までは予断を許さない状況が続く。

 国内では6シーズン連続のアウトブレイク。年末年始から2月にかけてがハイリスクシーズンとされ、養鶏事業者はもちろんのこと、発生農場の殺処分・焼埋却などの防疫措置を担う地方自治体の職員にとって年間で最も気が抜けない、心穏やかではない日々が続いている。

 一方、現段階ではまだ被害が少ないにも関わらず、卵の数が少ないのは、別の要因がある。「23年はほとんど発生がなく、生産が回復すると業務・加工筋の需要が戻らず卵価は大暴落。天国と地獄を経験した思いだった。卵価が高すぎると消費離れが起こるし、安すぎれば我々生産者が疲弊してしまう」と齋藤会長は話す。

 採卵鶏の飼養戸数は、14年の2560戸から10年間で1640戸に減少。羽数ベースで全体の8割以上を占める成鶏めす飼養羽数10万羽以上の事業者は現在、老朽化した鶏舎設備の更新に直面する。かつては1羽当たり5000円程度とされていた設備コストは1万円以上に高騰(アニマルウェルフェア対応だと2万円以上)する。10万羽規模の鶏舎を新たに建設しようと思えば少なくとも10億円以上、100万羽であれば100億円超の設備投資が必要となる。中小規模生産者にとって調達可能な額を超えている。

 鳥インフルエンザのアウトブレイクがもたらした空前の高卵価を、大多数の生産者は複雑な思いで受け止めている。飼料価格、人件費、設備費などあらゆるコストが上昇、大手のような農場分散化によるリスクヘッジがかなわず、現在の卵価でかろうじて経営が維持できている中小規模農家の実情があるからだ。


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