2026年3月15日(日)

田部康喜のTV読本

2026年3月15日

 東日本大震災の大地震と大津波、そして東京電力福島第一原子力発電所(1F)における、メルトダウンという未曽有の惨事から15年を迎えるにあたって、NHK総合(3月9日)は『原発事故15年 秘蔵ビデオが語る事故の真相』のタイトルで、メルトダウンの事故の陣頭指揮にあたった、1Fの元所長である吉田昌郎さんが死の直前に残した秘蔵ビデオを公開した。

吉田元所長が死の直前に語っていたこととは(NHK ONEより、以下同)

 メルトダウンに関する政府や国会などによる調査を待ってから、吉田さんは事故について公に語る意思だった。秘蔵ビデオの撮影については、本人も「ルール違反である」と語っている。

 それでは、なぜインタビューに応えたのか。東日本大震災による福島県民を中心とする人々のメンタル面をサポートしていた、藪原秀樹さんのチームが吉田さんに要請したのが大きな理由だった。インタビューアーには、このビデオ撮影を企画した、木下豊さんがあたっている。

 吉田さんは、各種の調査報告書が完成する前に、公に説明しようと思っていたが、2013年7月9日に食道がんのために亡くなった。享年58歳。

 番組は、この秘蔵ビデオの吉田さんの証言と、この連載『TV読本』でも幾度か紹介したNHKスペシャルのメルトダウンに関する調査、あわせて放送された再現ドラマを組み合わせている。NHKの原発事故における15年の調査報道の蓄積と、吉田さんによる「語り部」のように感じた。

 この間の時の流れは、事故の記憶が薄れていくばかりではない。ロシアによるウクライナ侵攻などによる、日本のエネルギー政策の転換もあった。「原発力は可能な限り低減する」から「原子力を最大限に活用」するに動きつつある。

 さらには、アメリカによるベネズエラ攻撃と、イスラエルと歩調を合わせたイラン攻撃も加わって、原子力の活用のありようはさらに変化の可能性がある。「核」は果たして制御できるのか、が番組の大きなテーマのひとつだったのはうなずける。


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