2026年5月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月26日

 戦略国際問題研究所CSISのハンナ・ノッテ氏がForeign Affairs誌(web版)に5月7日付けで寄稿し、「力こそ正義」の原則に立つトランプの登場は一見、プーチンにとって好都合に見えるかもしれないが、実際には国際システムの解体に導くトランプの登場がむしろロシアを弱体化させる可能性がある、との見方を披露している。

(ZUMA Press/アフロ )

 冷戦終結後、ロシアは米国主導の「ルールに基づく国際秩序」を、欧米が国際法や国際機関を利用して覇権を固めるための仕組みであると批判し、多極化世界の実現を掲げてきた。ところが今や、ロシアは米国がロシアのような振る舞いを目の当たりにするという、奇妙な状況に置かれている。

 「力こそ正義」とする米大統領が現れたことは、表面的にはプーチンにとって好都合に見えるかもしれないが、長期的にはロシアにとって損失となる可能性が高い。プーチンの戦略は、ロシアがルールに縛られない一方で、米国には既存の国際秩序に基づく拘束を強いることが可能な限りにおいて成功してきたからだ。今やトランプの行動は、そのような戦略をとるロシアの力を弱体化させる可能性がある。

 トランプ政権は、既存の多国間機関の力を弱める措置を講じ始めた。これは、ロシアが米国への対抗手段として頼りにしてきたシステムそのものを弱体化させるものだった。

 トランプはユネスコを含む数十の国際機関から脱退し、国連への資金拠出停止も進めた。また、「平和委員会」を設立し、国連を迂回する独自のネットワーク外交を展開した。

 ところが同委員会はトランプが最高責任者であり、ロシアは国連安保理で享受しているような特権を得られない。平和委員会への参加は、ロシアにとって降格を意味する。

 トランプはまた、「力こそ正義」の原則を極限まで推し進めた。2025年には7カ国に対する武力行使を命じ、ロシアの緊密な同盟国に対しても米軍を投入した。

 こうした米国の力の誇示はロシアを不安にさせた。米国によるベネズエラ、イラン攻撃を、ロシアは傍観せざるを得なかった。ロシアから見れば、トランプ大統領は「弱者が打ち負かされる」世界を作り上げている。

 長年、ロシアは国際的なルールや制度を嘲笑してきたが、それらによって構築された秩序こそがロシアに力と予測可能性を与えてきたのだ。トランプが国連を迂回し、非伝統的な外交を展開しようとする姿勢は、ロシアの拒否権を弱体化させる恐れがある。そして、米軍の軍事力展開に酔いしれるトランプの姿勢は、ロシアを二流国のように見せている。

 これはプーチンが望んだ世界ではない。彼は国際的に重要な問題について、ロシアが無視されるのではなく、協議されることを望んでいたのだ。


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