2026年6月29日付ウォールストリート・ジャーナルにて、同コラムニストで米国の外交・戦略論の重鎮ウォルター・ラッセル・ミードが、ウクライナ戦争を契機にロシアは大国としての地位を失うとし、その結果生じる地政学的変化を論じている。
ウクライナによるロシア領土へのドローン攻撃は、弱体ウクライナとの戦争に勝っていると聞かされていたロシア国民の生活を混乱させた。容赦なく続く軍事的犠牲は、減少傾向にあるロシアの人口をさらに圧迫し続けている。
停電と燃料不足がロシア占領下のクリミア半島を麻痺させ、絶望した住民が戦禍に見舞われた半島からの脱出に苦闘する中、プーチン大統領は、いまや最大の政治的試練に直面している。
軍事的な観点から見ると、最も顕著なのは黒海周辺のロシア勢力の衰退である。ウクライナのミサイルやドローン攻撃によって、ロシアの黒海艦隊はセヴァストポリからの撤退を余儀なくされ、海上戦力は無力化されている。
戦争が長引くほど、他の旧ソ連構成国におけるロシアの勢力は衰退していく。コーカサスと中央アジアの情勢はロシアにとって不利な方向に傾いている。
米国、中国、トルコは、これらの国々と経済的、軍事的連携を強化し、ロシアの支配を脅かしている。ベラルーシのルカシェンコ大統領はウクライナの脅威を懸念し、ロシアの戦争を支援するために自国領土を利用するよう求めるプーチンからの圧力に抵抗している。
最後に、ロシアのエネルギー問題は、最近のドローン攻撃によって引き起こされた燃料不足だけにとどまらない。イランと米国が合意に達し、イラン産原油が相当量世界市場に再び供給されるようになれば、プーチンは原油収入の激減に直面するだろう。
ウクライナによる製油所など施設への攻撃は、ロシアの輸出能力を制限している。価格の下落と生産量の減少が重なれば、ロシア政府の歳入は深刻な落ち込みに直面する。
長期的には、中国が輸入を削減する一方、ベネズエラやアルゼンチン等の生産量が増加する可能性が高く、価格の下落を示唆している。ロシア領土を経由しない中央アジアの石油・ガス輸送ルートの確立に向けた進展は、世界のエネルギー市場におけるロシアの影響力をさらに低下させるだろう。
