2026年8月5日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年8月5日

 Economist誌7月18日号の記事が、イラン戦争を契機にパナマ運河の重要性はますます高まっているが、その課題も深刻化していると解説している。

(Anze Furlan / psgtproductions/gettyimages)

 今年、イラン戦争の影響で、パナマ運河通航の需要が急増し、1日あたり36〜40隻という通航可能数の上限に近い水準に達した。各国が米国産エネルギーへの依存を高め、同運河を経由する船舶の数も急増したのだ。特に液化天然ガス(LNG)運搬船の通航数は、4月時点で前年同月比のほぼ2倍に達した。

 パナマ運河が担う海上貿易量は、世界全体のわずか5〜6%だが、中東での戦争や物資・エネルギーの流通に関する構造的な変化を背景に、同運河の重要性は高まりつつある。これはパナマにとって大きな恩恵となり得る。

 とはいえ、パナマ運河は、2つの大きな課題に直面している。その1つは、気候変動に対する運河の脆弱性だ。運河の閘門は湖の水を利用しているがその水位は降雨量に依存する。

 2023年から24年にかけての深刻な干ばつにより、運河当局は1日の通航数を最小で18隻にまで削減せざるを得ず、多くのLNG運搬船が喜望峰ルートへの変更を余儀なくさせられた。今年のエルニーニョ現象も、同様の混乱を引き起こす可能性がある。

 しかし、最も差し迫っているのは、米国と中国の対立の渦中に置かれているという地政学的問題だ。トランプは、25年1月に復帰して以来、パナマ運河を「取り戻す」と繰り返し脅している。これは単なる威嚇のようにも見えるが、トランプが繰り返し言及するテーマでもあり、米政府の関心から長らく遠ざかっていたように見えたパナマにとって、こうした注目は衝撃的だ。

 トランプが懸念しているのは、米国のサプライチェーンの安全保障だ(パナマ運河を通航する船舶の70%以上が米国発着)。25年、彼の政権は世界の「海上交通の要衝」に関する調査を開始したが、その背景には、南北アメリカ大陸への外部勢力の介入を拒む19世紀の「モンロー主義」を復活させようとする姿勢がある。彼は、中国がこの運河を「牛耳っている」と繰り返し主張してきた。

 近年、パナマにおける中国の存在感は急速に拡大している。96年、香港を拠点とする複合企業CKハチソンの子会社のパナマ・ポーツ・カンパニーが運河の両端の2つの港の運営権を獲得した。その後、他の中国企業もこの水路周辺に集まった。

 パナマは、戦略的資産を売買可能な単なる資産として扱ってしまう傾向がある。また、法の支配よりも中国共産党の意向に縛られる中国企業は、汚職が横行するこの国において、米国の競合企業よりも容易に取引を成立させてきたとの指摘もある。


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