問題は、中国政府がこれを不当な政治介入によるものとして強く反発し、報復措置を取っていることだ。パナマ船籍船に対する中国港湾での検査・出港停止措置が2月以降急激に増加しており、関税検査の強化や中国遠洋海運集団(COSCO)のパナマへの寄港停止、パナマへの投資抑制等の措置も講じられている。
これは日本にも様々に影響を与えており、3月の段階で、拿捕されたパナマ船籍船の39%が日本船主とも報じられており、海上物流計画の混乱や費用増が生じている。
米国の影響力の限界
このような状況は、パナマ経済にとっても無視できない影響をもたらすものだ。中国港で船舶が足止めされるリスクから、日本を含め船籍をパナマからリベリア等に切り替える動きが加速しており、これはパナマ政府にとって重要な収入源である便宜置籍船事業に重大なダメージとなり、また、世界最大の船舶登録国としての競争力や信頼性が脅かされ、パナマの海事セクターの地盤沈下を招く恐れがある。
また、中国からのパナマへの新規投資が停止し、本年第1四半期の同国への外国直接投資が激減している。グローバルな海運市場やサプライチェーンにも物流の遅延と運航コストの増大といったネガティブな影響をもたらしている。
米国連邦海事委員会(FMC)は、中国政府の措置を「標的型経済圧力・報復」と認定し、4月28日に米国国務省は、中国の行動は海上貿易の政治化と西半球の主権侵害であり、パナマ主権への脅威は地域全体への脅威だとする共同声明を発表した。これにはボリビア、コスタリカ、ガイアナ、パラグアイ、トリニダード・トバゴが参加したが、いずれも中国への依存度が相対的に低い国々で、米国は、中国の経済的威圧に対する地域的連帯を示そうとしたのであろうが、むしろ米国の影響力の限界を示したような印象を与える。
米国政府は、パナマ船籍船の不当な拘留は、米国発着の貿易に対する妨害であり、サプライチェーンを不安定化するものとして、米中間の貿易協議での議題とすべきであろうし、自由な海上物流を重視する国々は必要に応じパナマを支援すべきであろう。
いずれにせよ、パナマが米中対立の「チェスの駒」となることを回避することはそう簡単ではないだろう。

