2026年9月4日(金)

日本の農業論にモノ申す

2026年9月4日

 全国各地の農場を歩く中で、とりわけ30歳前後の就農者から、チャット型の生成AIを営農によく使っていると耳にするようになった。「現場でわからないことをどんどん聞けば、その都度即座に答えが返ってくる」との感想も聞こえてくる。指示に応じて処理をしてくれるAIエージェントをはじめ、新たな技術の発展により、農作業に寄与する情報やアプリが得られるようになりつつある。

(zhudifeng/gettyimages)

 ところが、実際に生成AIを活用する農家の圃場に入り、作物の生育を見て、驚くことがある。作物の出来があまり良くないのである。熱心に生成AIを使いこなしているはずなのに、なぜか作物が期待どおりに育っていないのだ。

 生成AIは本当に営農に役立っているのだろうか? 農業現場での実態を見ていきたい。

現場で検証して驚いたこと

 農業における生成AIの活用、とりわけ気象予測や猛暑対策等の踏み込んだ利用はまだ始まったばかりと言える。その理由として、基幹的農業従事者の平均年齢が約68歳と高齢であること(2025年農林業センサス)、農家に生成AIの活用について十分な情報が届いていないこと、「毎日の作業に追われ、生成AIを使ってみる余裕がない」(若手農家談)ことがある。

 一方、これまでにお会いした生成AIをよく使っている農家は、以前は他産業に勤めていて、農業経験そのものはまだ長くない方が多い。パソコンやスマートフォンの扱いには年配の農家に比べ慣れ、新しい道具への抵抗が少ない世代でもある。また、新しい技術には貪欲で生成AIを積極的に取り入れようとしているようだ。

 ChatGPTやGemini、Claudeに、作物の生育状況の判断や、水やりおよび肥料の必要量を聞くといったものだ。気象予測や昨今多発する台風などの対策、猛暑への対応方法も求めたりしているという。

次の日の農作業可能時間提案アプリ(筆者作成、以下同) 写真を拡大

 あらゆる場面で意思決定を求められる農家にとって、生成AIは助けを与えてくれるように見える。しかし、冒頭に示したように、普段生成AIを使い込んでいる農家でも、生成AIの利用が必ずしも生育向上に寄与していない。その理由はやはり経験の不足だろう。だが、それだけではないように思う。

写真に撮ったレタス(左)の栽培管理を相談した 写真を拡大

 「生成AIに聞いて、次々と回答を得て、それに従って作業を改善していけば、栽培はうまくいくはずだ」という期待そのものが、現実とはかなり食い違った結果を生んでいるのではないか。そう感じさせる場面に、何度か出くわした。


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