2026年5月20日(水)

日本の農業論にモノ申す

2026年5月20日

 日本で「普及指導員」という言葉を聞いて、その役割を即座に説明できる人は多くないのではないだろうか。

 普及指導員とは、農業の専門技術・経営知識に基づき農業者へ指導や支援を担う国家資格を持つ都道府県職員だ。日本には農業協同組合(JA)に所属する「営農指導員」も存在するが、別のものである。マスコミなどの露出度も影響して、多くの人が「指導員」というと営農指導員をイメージしやすい。

生産者と栽培管理を確認する普及指導員(北海道庁提供)

 しかし、戦後日本の農業・農村の振興の現場をJAの営農指導員とともに支え続けてきたのは、公的普及事業を担う普及指導員であるということは紛れもない事実だ。その貢献は多大であるにも関わらず、残念ながら知名度は高くなく、その重要性が国民に十分に認識されていないのが現状だ。その日本農業を支えてきた「普及指導員」が、今、大量退職の時期を迎えている。

 農業の担い手不足を補う若手就農者への支援や、AIをはじめとする技術革新への対応が求められる中、普及指導員の役割は今後さらに高まる。一方で、日本の食料生産を支えてきた多くのベテラン普及指導員が現場を去ってしまえば、普及事業が大幅に縮小する危機すら直面する。

 筆者は長年、日本と海外の普及事業に関わってきた。日本の普及事業は海外から評価されている面があるものの、課題も多い。そこで、戦後、日本の普及事業の手本になったアメリカの普及事業と、ハワイを例に挙げて比較し、その方向性について検証したい。

「普及指導員」と「営農指導員」

 普及指導員は現在、全国に6000人弱が配置されている。コメやニンジン、イチゴといった品目をそれぞれが担当し、専門的な知識や技術を備え、現場の農家を指導している。

 国家資格を得るためには、大学院修了後2年以上、大学卒業後4年以上などの実務経験が必要となる。以前は農業改良を目的とする「農業改良普及員」と専門技術を教える「専門技術員」があったが、2004年の法改正を経て、05年4月に「普及指導員」に統一されている。

 これに対し、JAの営農指導員は、JAの組合員を対象にし、販売活動にも関わっている点が大きく異なる。組合員への農業経営の技術・経営指導や、農畜産物市場の情報提供、新しい作物や技術の導入を手掛けるが、現場では普及指導員と一緒に活動することが多い。

 各地域の農家は最新の技術情報や経営改善の指導を求めており、普及指導員はJAの組合員でない農家も含めて、経営改善や地域振興を支援している。


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