「日本の稲作は大規模農家に任せ、スマート農業を取り入れて、効率化すればいい」などの報道が盛んにされてきた。
しかし中山間地は国土の約6割を占め、耕地の4割ほどは中山間地にある。中山間地の圃場は傾斜地にあり、圃場の形状も不整形区画や小区画であることも多く、通信環境も厳しく、スマート農業は導入しづらい。
実際の現状はどうなのか? 福島県郡山市の中山間地の現場を訪問したので、報告したい。
中山間地に残る“10平方メートル”の水田
訪れたのは、福島県郡山市田村町にある楪(ゆずりは)園芸だ。郡山市と言っても、郡山駅から車で南東方向へ30分程度行った山間部である。日焼けした柏原秀雄代表が笑顔で迎えてくれた。
この地域は、小泉進次郎前農林水産大臣が中山間地の実態を見たいと訪問し、テレビのニュースなどで放映されたことを覚えている読者もおられるだろう。
小泉前農水大臣の訪問の際に、地域の実態を説明していたのが、柏原さんだ。筆者も楪園芸の事務所前に広がる圃場まで案内していただいた。
驚いたのは、一面水田が広がるなかに1枚10平方メートルほどの小さな圃場も点在している点である。この小さな圃場を保有し、耕作する農家がおられるそうだ。
「この地帯は基盤整備が遅れ、小さな区画の圃場が多い。農家は70歳以上が多いが、少しの圃場でも自分でコメ作りを続けたいと手放さない」と柏原さんは説明する。
「しかし、あと10年20年もすれば耕作できない農家も増えてきて、このままでは地域の稲作が崩壊するのではないか」と柏原さんは危惧する。
