2025年12月5日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年11月6日

 労働時間が平地の農家より長くなりがちな中山間地の農家にとっても、負担軽減効果は大いに期待できる。加えて、水を張らない期間が長いため、世界的に温暖化の原因として問題になっているメタン排出の大幅な削減が期待される環境技術でもある。

収穫間近の楪園芸周辺の圃場(筆者撮影)

 ただし、この技術は雑草の繁茂をいかに抑制するかがポイントとなる。全国では農家がどういった除草剤をどのタイミングで使うのかが手探り状態で、雑草が多くて収量が取れなかったなど、失敗事例もあるという。

 柏原さんは「節水栽培とは水を全く使わないということではなく、最低限に留めること。水を張らない圃場では、雑草との戦いだし、除草剤も必要。この技術の核は、植物の強さを生かす新しい資材『バイオスティミュラント資材』と除草剤の使い方をいかにマスターするかだ」と言い切る。

 バイオスティミュラント資材(BS)とは、従来の農薬、肥料、⼟壌改良資材とは異なる新たなカテゴリーの資材の開発・普及が進んでいる新しい資材だ。現在、我が国で流通しているBSには、栄養吸収効率の改善、環境ストレス耐性の向上等の効果が期待されるものがある(出典:農林水産省「バイオスティミュラント資材に関する資料」)とされる。

 節水型乾田直播2年目の栽培管理が上手くいき、柏原さんの試算によると、春作業の労働コストは6割から7割減少したそうである。年間通じて見ると約70日間かかっていた水管理が、幼穂形成期・出穂期・登熟期の3回の水供給で済む程度になり、柏原さんによると労働コストが約4割減少し、水使用量が8~9割ほど削減と期待以上だったそうだ。そのため、柏原さんのところには節水型乾田直播に挑戦したい全国の農家らから、コンサル依頼が殺到しているという。

高齢農家を支えるコントラクター

 中山間地農業振興のもう一つの柱は、他の農家から農作業の一部を請け負うコントラクター事業である。これは高齢化が進んでいて、作業が十分にできない農家らに対して、必要な作業を代行するサービスである。

 タイなどではすでに普及しているサービス形態だが、今までは、日本の農家が適期作業への強いこだわりがあり、機械を自分で保有したいとの希望が強く、あまり進んでこなかった(日本農業機械化協会調査結果、筆者2024年10月タイ調査結果より)。しかし、急速に高齢化が進む中山間地では、救世主的なサービスになる期待が大きく、政府もその普及を後押ししている。

 楪園芸では自動操舵トラクターやドローン、草刈り機など最新のスマート農機を保有し、近隣農家にこのサービスを提供する。

自動操舵トラクター(柏原氏提供)
乗用草刈り機(筆者撮影)

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