2026年1月29日(木)

商いのレッスン

2026年1月29日

◆今日のお悩み
物価は上がり、人手不足は慢性化し、賃上げは「避けて通れない前提」になりました。とはいえ、原資には限りがあり、将来の見通しも不透明です。賃上げは本当に続けられるのか。これはコストなのか、それとも経営として引き受けるべき意思なのか。経営者として、どこに判断の軸を置けばよいのでしょうか。
春闘が実質スタートした(写真は2025年3月、産経新聞社)

 東海道新幹線のグリーン車。肘掛けに置いたスマートフォンの画面に、春闘のニュースが流れてくる。「今年も賃上げ率は高水準」――そんな見出しに、驚きはもうない。むしろ胸の奥に残るのは、安堵でも反発でもなく、「さて、自分はどうするのか」という、答えのない問いだ。

 賃上げは世論になり、空気になり、前提になった。もはや「やるか、やらないか」を論じる段階ではない。問題は、それを引き受け続けられる経営をしてきたかどうかである。

春闘の数字が映さないもの

 2026年春闘は、表面的には前年に続く「高水準」の賃上げが見込まれている。物価上昇が一過性ではなくなり、人材確保が企業存続の前提条件となった今、賃上げはもはや特別な施策ではない。多くの企業にとって、「やるかどうか」を迷うテーマではなくなりつつある。

 だが、数字の裏側を冷静に見れば、状況は決して一様ではない。大企業と中堅・中小企業の間には、賃上げ余力の格差が依然として大きく横たわり、業績の見通しが立たないまま判断を迫られている経営者も少なくない。

 26年春闘の本質は、「賃上げ率が何%になるか」ではない。賃上げを前提に経営を続けられる企業と、そうでない企業がより明確に分かれていく局面にある。

 ここで改めて問われるのが「自社の時間軸」である。これは抽象的な言葉ではない。目の前の1年、2年の損益を軸に経営を考えているのか。それとも、5年後、10年後も人が働き続けられる会社であるために、いま何を引き受けるのかを考えているのか。その経営判断の基準となる時間の長さを、ここでは指している。


新着記事

»もっと見る