担い手の高齢化が進む日本の稲作。コメ価格の変動に翻弄されてきた現場では、どのようにして稲作が営まれているのか。8月半ば、立山連峰を望む富山県北東部の入善町で、コメや野菜、果樹を栽培している「農事組合法人あおしま」を訪ね、農家たちを取り巻く現状と率直な思いを聞いた。
JR富山駅から車を走らせること約50分。北陸自動車道を通り、収穫が近づいている入善町の水田一帯は、実りの穂が垂れる風景が広がっていた。
清流・黒部川がつくり上げた扇状地にある同町は、立山連峰から年中、豊富な水が供給され、農業用水の水流は驚くほど潤沢だ。しかも手を浸せばひんやりとしており、気持ちいい。まさにコメ作りに適した場所だ。また、高温障害に強い品種の富山産ブランド米「富富富」の割合が高いことから、猛暑が続いても例年通りの収量が期待されているという。
約50人の兼業農家が加入している「農事組合法人あおしま」は、80ヘクタールの農耕地で、コシヒカリや「富富富」、大豆やブルーベリーなどを栽培している。
今年3月から輪番制で代表理事役を担うことになった総合建設業を経営する兼業農家・大角一紀代表理事(70歳)は「あおしまは約20年前に設立された。担い手不足の影響もあり、コンバインや田植え機、乾燥機などの価格はかつてに比べると高騰しており、全部揃えようとすれば5000万円くらいかかる。そのため、個人でコメ作りをする人が減少し、組合に耕作を任せるようになり、集約化が進んできた」と話す。農業を辞めた人は組合に農地を預けて地代だけもらう形になる。
入善町でも少し山の方に行くと、耕作放棄地が増えて雑草が生い茂っている農地が見受けられるという。農林水産省の調査によると、日本全体の耕作放棄地は42.3万ヘクタール、ほぼ山梨県の面積と同じほどもある。全国的に見ても、土地を持っているが農業をしていないか、自給的農業だけをしている農家の耕作放棄が増加している。この放棄地が農作物を食い荒らすイノシシのすみかになっているところもあるようで、放置できなくなってきているという。
