2025年12月6日(土)

コメと日本人

2025年9月25日

 夫人がこれだけ働いても、労働の対価は時給に換算すると100円程度にしかならないそうで、家計でみると農業だけで食べていける収入にはほど遠いのが現実だという。

コメ価格は高いのか?
輸出に活路を見出す農家

 コメ価格の水準について聞くと、「平成に入った1990年頃は、1俵(60キロ・グラム)約2万3000円だった時期があり、コメを作っているだけで、大学まで行かせてもらった時代があった」という。しかし、その頃からコメ余り傾向が強まり、価格が低迷するようになった。その結果、コメ作りだけでは食べていけない農家が増加して、コメ価格の下落を食い止めるため、国による生産調整が一貫して続いてきた。

 コメ農家からすると「茶碗一杯のコメは60円ほどしかなく、他の食料品価格と比べるとまだまだ安い。我々生産者としては、5キロ・グラム当たり末端価格で4000円くらいは妥当であり、ようやくコメ作りの労力に見合った適正価格に近づいてきた」と本音を語った。

 「JA全農とやま」が8月19日に発表した、新米を集荷する際に農家に前払いする概算金は前年より約60%高い価格となり、2004年以降では最高となった。生産者の手取りを確保し営農を継続できて、流通段階を経て末端の小売価格が5キロ4000円を超えない水準を想定して決めたという。

暑さに強い品種の「富富富」(YONEYAMA-NOSAN)

 入善町青島地区では、農事組合法人で6割、大規模農家で4割の比率で農業を営んでいる。農業の大規模化は日本全国で進められているが、小さい面積の水田が散在しているため、集約化することが難しく、特に中山間地域の場合は、結果的に耕作放棄地になってしまうことが多い。

 青島の隣の地区で大規模農業経営を営む米山農産の米山義隆社長(60歳)は、24年は105ヘクタールの水田面積でコメを325トン生産し、JAを通した価格よりも高い価格で販売したいという思いから、JAを通していない。同年はそのうち31トンを商社経由で海外に輸出した。18年からは台湾に輸出し始め、現在は米国を中心に輸出を伸ばしており、25年は42.7トンを輸出する計画だ。ニューヨークやハワイ、香港などまで出掛けて、現地の消費動向を細かく把握している。米山社長は「香港では寿司の人気が高まっており、手応えを感じている」と話し、どうやったら他県産のコメに対して価格競争力をつけられるか、選んでもらえるかに日々腐心しているという。

 従業員は現在6人で平均年齢は35歳と、農事組合法人と比較して断然若く、今年も40代が1人加わった。「10年先を見据えて、農地や就農希望者の受け皿とし、会社の体制を強化していきたい」と拡大生産に備えて将来計画も立てている。

 「コメの増産に向かうのは良いとしても、ある程度、需給見通しの取れた生産を行わないと、またコメ余りになり、価格が暴落する懸念がある。国のデータを基にして、民間主導で流通量を調整してほしい。万が一の時は農業収入保険を含め、国が戸別所得補償を行うことを考えてもらいたい」と安定収入が得られるような制度、政策を求めている。


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