2025年12月6日(土)

コメと日本人

2025年9月25日

見えない10年先
「後継者不足問題」は深刻

 農水省の調査によると、農業就業人口のうち基幹的農業従事者(主に仕事として農業に従事している者)の減少傾向が目立っている。24年2月時点では111万4000人で、このうち65歳以上が79.9万人。20年と比較すると従事者数は15.9%減少、平均年齢は67.8歳から69.2歳と高齢化が進んできている。

 この農事組合法人でも、後継者問題は極めて深刻だ。これまでのコメ価格の水準では食べていけないことを身に染みて実感しているだけに、入善町の多くの若者は県外や東京方面に就職してしまう傾向が強いようだ。こうした流れを食い止めようと、「若い世代に少しでも農業に関心を持ってもらうため、30代から80代までの世代間のコミュニケーションを深めるため、組合が主催して年に2回、食事会や懇親会を行っている」という。だが、理想と現実には大きな乖離がある。

 「農業のつらさを知っているので、自分の子供にさえ農作業を手伝わせてこなかった親世代が多い」「待遇面も含めて農業を魅力ある職業にしていかないと若い人は継がない」「若い人たちからすると、『自分たちではできないから農事組合法人にしたのでしょう』との思いがあるはず」「高齢化したから継いでくれという理屈は納得できないだろう」といった声が組合幹部から聞こえてきた。

 農事組合法人あおしまでは、70代の高齢者が何とかして助け合いながら農業を営んでいる。ただ、10年後には体力的にも限界を迎えることは必至である。その時、後を継ぐ人は少ないという現実がある……。

 先祖伝来の水田はどうなるのか。

 大角代表理事は「国に返上することになるのかな」と自嘲気味に話すがその先に、コメ作りが将来にわたって持続可能になる明るい展望は見えてこない。

 米山農産のような大規模農業は生き残れるとしても、半分以上の農地を占めている農事組合法人の経営は後継ぎがいなければ消滅するかもしれない。富山県でもすでにそれに近い農事組合法人が出てきているという。そうなると、せっかく集約化してきた日本のコメ作りは、担い手不足から立ち行かなくなる恐れが出てくる。政府が進めてきた食料安全保障構想は風前の灯火となる。

 農水省はコメ増産方針に舵を切った。だが、担い手を確保できないことには、すべてが絵に描いた餅になる可能性がある。農業の機械化・省力化は進めるべきだが、山間部などすべての農地に適しているわけではなく、限界がある。

 担い手の確保は必須だ。入善町の現状は、我々に静かな警告を発している。傍観し、無為に過ごすことはできない。

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Wedge 2025年10月号より
コメと日本人
コメと日本人

「令和の米騒動」─。米価高騰、コメ不足の原因は複数あるが、ここまで騒ぎが大きくなった背景には、稲作に対する、長年の国民の無関心もあるのではないか。稲作の未来を経済的に考えれば、スマート化、大規模化一択なのだろう。しかし、それによって地域の担い手や環境保全は誰が行ってゆくのかの議論は乏しい。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、米価が下がれば関心をなくすのではなく、日本の稲作の未来をどうするのか、時間をかけて考え、耕していく必要がある。


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