2026年1月13日(火)

Wedge REPORT

2026年1月13日

 2025年の秋、スルメイカを巡り政治家を巻き込んだ騒動が勃発した。24年漁期に比べて漁獲量が早い段階から積み上がり、水産庁が2度にわたって漁獲枠の拡大を決定したのである。資源が極めて危うい状況にあるため漁獲枠が削られていたにもかかわらず、漁業者の陳情を受けた政治家が増枠を要求、これに水産庁が応えた結果である。

このままでは、スルメイカが日本の食卓に並ばない日が来るかもしれない(KAZUSHIGE HORIGUCHI/AFLO)

 だが、そもそも、漁獲枠は「水産資源の持続的な利用を確保する」という、20年に施行された改正漁業法に基づき、最新の科学的知見を踏まえた資源評価の下で設定されている。一部の漁業団体に促された政治家の〝鶴の一声〟によって漁獲枠をいかようにでも変えられる状況は、改正漁業法の下での資源管理を形骸化させるもので、科学に基づく政策決定のみならず、国民全体の利益すら踏みにじるものである。

 今回の騒動に関して、一部のマスコミではスルメイカが「豊漁」であるかのように報道された。しかし、実際は漁獲量が24年漁期に比べて増えた程度のものであり、長いスパンで見ると、00年漁期に約30万トンあった漁獲量は、24年漁期は1万7998トンと、実に94%の減少である。漁獲量の減少に反比例する形で、東京都中央卸売市場のスルメイカ平均価格は02年の1キロ当たり387円から、24年には1310円に上昇している。

 資源状態も極めて憂慮される状態にある。スルメイカには、主に日本海に分布する秋季発生系群と、太平洋を中心に日本海にも⽣息する冬季発生系群の2系群が存在している。漁業法の下では、資源の増加量が最大になる、最も望ましい親魚の量を「目標管理基準値」、このラインを割ることは極めて望ましくない「限界管理基準値」を設定するなどして、漁獲量を調整することが原則である。だが、スルメイカは秋季・冬季両系群とも「目標管理基準値」どころか「限界管理基準値」すら大幅に下回っている。

 本来ならば一刻も早く資源回復措置を強化すべき段階だ。このような中で漁獲枠を拡大することは、科学的根拠に基づく資源の持続的な利用とは正反対といえる。


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