毎日のおかず、定食、お弁当など、すっかり日本の市場に浸透しているノルウェーサバ(大西洋サバ)。量販店の売り場では、その半分がノルウェーサバです(2025年ノルウェー水産物審議会調べ)。さてそのノルウェーサバの価格に異変が起きています。
11月末頃から日本にサバの冷凍原料が到着し始めます。2010~20年頃にはキロ200円程度だった原料買付価格が、その3倍以上のキロ600円以上と、これまでにない高コストになっています。サンマやスルメイカをはじめ資源量の減少による漁獲量の減少で、国内大衆魚が次々と高級魚化しているのはご存じの通りです。
徐々に上昇傾向にはありましたが、これまで輸入品のノルウェーサバは比較的安定して輸入されてきました。しかしながら需給状況が変わりました。
理由は大西洋でのサバ資源の減少傾向により、25年のサバ漁獲枠が前年より2割削減されたことにあります。さらに秋の買付シーズン前から26年はさらに漁獲枠が削減されると予想されていたため、余計に現地相場を高騰させてしまう要因になっていました。
ノルウェーでは数量による資源管理が徹底されています。このため枠が2割減ることは、漁獲枠と漁獲量が毎年ほぼ同じなので、供給量が2割減ることになります。世界市場は前年から出ている漁獲枠減の情報にすぐさま反応し、漁獲が本格化する8月には買付相場が暴騰をはじめました。
そして9月末に「来年のサバ漁獲枠は7割減少」という勧告が国際海洋探査委員会(ICES)から出されると業界に衝撃が走りました。
そして高騰したサバの価格は、加工されて製品になり消費者に転嫁されていきます。世界の水産市場はつながっています。ノルウェーでのサバ価格の高騰は他人ごとではなく自分ことなのです。
ちなみに日本では、サバ枠が来年減少しようが増加しようが市場は反応しません。なぜなら96年に制定された漁獲可能量(TAC)法に基づいて設定された漁獲枠が実際に漁獲できる漁獲量より多く、漁獲枠と漁獲量が乖離しているからです。
こういった枠の設定はノルウェーサバでは「あり得ない」ことです。このため、ノルウェーでは漁業者が漁獲を避ける未成魚(2歳未満)ですら日本では一網打尽にしてしまい資源が減ってしまったのです。そして獲れなくなると海水温上昇や外国に責任転嫁され、社会が魚が消えていく本当の理由である「獲り過ぎ」を知りません。
