価格がさらに上がる仕組み
売場での価格が上がると需要は減ります。高騰した買付価格を販売時に転嫁できなければ大きな損失となります。
輸入業者はリスクを減らすために取扱数量を減少させていきます。一方でサバをオークションで買って冷凍加工して日本他に輸出する輸出業者は、取り扱い数量減を利幅でカバーしようとするので、安く出しません。
この時点で、日本の取扱数量が圧倒的であれば、売れないサバが在庫になって相場が下がることもあり得りえます。一方、他の市場が日本が買えない分を買ってしまえば相場は下がりません。結果として相場は下がるどころか、来年の漁獲枠大幅削減が確実になったことで逆に上がってしまいました。
さて、日本への供給が減少すると、輸入・加工・流通の各段階で取り扱いが減る分、必要な利益確保のためには、減った数量に対して載せる利益を上げる必要があります。利益は数量X利幅(キロ・1枚価格など)ですので、末端での販売価格はさらに上がってしまいます。
ただし、上記は売る側の理屈です。消費者の方で買う数量が供給量より減れば需給バランスが崩れて下がることがあります。ところが「サバが高いから他の魚」といっても、他の国産魚は毎年の水揚げ量が過去最低更新ばかりで安くありません。またサバ以外の輸入水産物も安い魚種はほとんどなくなりました。
サバの一大拠点である千葉県銚子市では、ノルウェーサバを加工の柱としている加工業者が少なくなくありません。ただでさえ近年の価格上昇を製品価格に転嫁しずらいのに、今年、そして来年の原料価格高騰は経営に大きな影響を及ぼしてしまいます。
国内価格も高騰
ノルウェーサバの10月の平均水揚げ価格(浜値)は、キロ約700円と大変な高値となりました。大西洋でのサバ枠による価格暴騰の影響で国内のサバ価格も高騰しています。三陸など太平洋側でのサバの水揚げは少なく、200~300グラムでキロ400円前後というこれまた異常な高値になっています。
本来はこのサイズは小さくてあまり食用に回りません。ところが大西洋サバ(ノルウェー、英国他)の高騰で、日本のサバは非常に安価に映ります。実際に筆者にはPELAGIC FISH FORUMという世界の浮き魚業界の評議員を長年やっている関係で、日本のサバを主にアフリカ向けに買いたいという相談がよく来ます。
もともと200~300グラムのサバは養殖に使うエサや、安い缶詰(小型のサバ使用)などでした。それがアフリカの食用向けへの需要が2000年頃から始まり、小さなサバの価格を下支えして現在に至ります。

