アフリカ向けの価格(24年の平均輸出価格キロ166円)が下支えとなり、それまでキロ100円程度のサバ缶向けの原料がそれより高い価格へと上がっていきました。
そして、太平洋側には獲り切れないだけサバ枠があり、魚価が高いので余計にサバの幼魚であっても見つけ次第獲り尽くしてしまう悪循環が続いてしまうのです。なおこれは、自分が漁業者であれば生活のために獲ることはその立場になれば当たり前なのです。
筆者には小サバを獲りたくなくても獲らざるを得ないという悲痛な声も届きます。また獲らなければ他の漁業者が獲るだけです。これを「共有地の悲劇」と言います。分かっていても乱獲してしまう根本的な原因は、漁業者ではなく資源管理制度にあるのです。
水産加工業への影響
大西洋サバ(ノルウェーサバ)の価格高騰とそれに伴う輸入数量の不足は、千葉県銚子市をはじめ全国のサバ加工業者に悪影響を与えてしまいます。
もともと日本で使用していたサバの加工原料は国産でした。それが主に資源管理の不備で漁獲量が1990年以降に激減し、加工に使えるサバが大幅に不足して現在に至っています。前浜で水揚げされたサバがなくなり、遠く離れたノルウェーからサバを輸入するようになったのです。
筆者は当時ノルウェーの最前線でサバの検品や交渉を行っていました。今と異なり、競合相手は海外ではなく日本の輸入業者間によるもので、余った冷凍サバがアフリカに輸出される程度でした。それがアフリカに加え、欧米・ロシア東欧・アジアと世界中に需要が広がりました。
このため日本側の希望通りに買うことは年々困難になっています。価格は需給によって決まります。日本ではこの価格以上は受けられないと言っても、他の国々が買ってしまえばそれが相場になっていきます。
もともと日本で加工されていたノルウェーサバは、日本の技術指導で2000年頃から人件費が安かった中国に移っていきました。そして今では、日本向けの加工は関税がかからないベトナムへとシフトが進んでいます。しかしながら、中国は日本の協力がなくても独自にノルウェーから仕入れることが来ますし、中国国内向けも含めた市場を持っています。
こうして、ノルウェーでの日本の水産加工業の位置づけは下がっています。ノルウェーからの輸入が難しければ原点に返って前浜のサバを加工するとう選択肢が考えられます。しかしその前浜のサバ原料は、成長乱獲を繰り返しているためサイズが小さく加工に向きません。それでも背に腹は代えられないので、小型で水揚げ数量自体が少なくても何とか確保しようという動きになります。
こうして200~300グラムの「ジャミ」や「ローソク」と呼ばれるサバの幼魚も何とか加工するようになります。しかし価格が高く、脂ののりも小型ゆえにあまり良くないことは避けて通れません。そしてその高くて脂がのっていないそのサバを食べるのは外ならぬ消費者となります。
日本は成長する前の小サバをキロ200円弱で輸出。そしてその3倍強の価格でノルウェーから大きなサバを買う。経済的にも資源的にもとてもおかしな話です。
本来は、科学的根拠に基づく資源管理で、小型のサバを獲らない仕組みができていればこうした問題はある程度回避できたのです。
