2026年2月27日(金)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2026年2月27日

 高市早苗政権が掲げた成長戦略の17の重点投資分野に、「港湾ロジスティクス」が含まれている。半導体やAI、蓄電池といった先端産業が連日注目を集める一方で、港湾分野が大きく報じられる機会は少ない。 

(suzume/gettyimages)

 日本の輸出入貨物は重量ベースで約99%を海上輸送に依存している。生活物資、エネルギー資源、産業を支える原材料のほとんどが港を経由して国内外を往来する。港湾は単なる物流拠点ではなく、国家の競争力と経済安全保障を支える基盤そのものだ。

 しかし、その基盤を担う人材が、確実に減っている。国土交通省の資料によれば、2020年時点の港湾労働者数は5万605人。労働力人口と同率で減少すると仮定すれば、40年には約1万1000〜1万2000人が減少、3万9500人程度まで縮小するとの推計が示されている。

 港湾は設備産業でありながら、実態は高度な技能労働に依存している。コンテナクレーンの操作、ヤード内の積み替え、コンテナのロケーション管理——いずれも熟練を要し、設備があっても動かせる人がいなければ機能しない。

 現場ではすでに制約が顕在化している。北九州港の太刀浦コンテナターミナルでは、労働者不足と働き方改革への対応を理由に、日曜日の荷役作業休止と土曜日のゲート作業の終日クローズが決定された。小樽港でも、体制見直しにより土曜日のコンテナヤード営業が終日停止されている(本船作業は継続)。一部ターミナルの対応とはいえ、「週末制限稼働」が現実となったことは象徴的である。

 数字もこれを裏付ける。国土交通省の調査では、港湾運送事業者のうち「労働者が不足またはやや不足」と回答した割合は、19年度下半期の55%から22年度には68%へ上昇し、26年度には70%に達する見込みとされる。港湾荷役作業員の有効求人倍率は24年度で5.22倍——全職業平均1.14倍の約4.5倍であり、人材確保の困難さは数値に如実に表れている。

 年齢構成も変化している。22年時点で港湾労働者の50歳以上比率は33.4%。全産業平均と近い水準ながら、上昇スピードはそれを上回る。6大港では45歳以上の割合が着実に高まっており、熟練者が一斉に退場する局面は遠くない。

 港湾の安定稼働を支えてきたのは設備ではなく、人の技能である。その人的基盤が2割以上縮小する未来が予見されている以上、従来型の延長線上に解はない。港湾ロジスティクスが成長戦略に位置づけられた意味は、まさにここにある。問われているのは、危機の有無ではなく、構造転換に踏み出せるかどうかだ。


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