海上輸送は日本の貿易量の約99.6%を担っており、日用品や食料、原材料、工業製品など、生活と産業の根幹を支える。その海上輸送と国内物流網をつなぐ“結節点”ともいうべきコンテナ陸上輸送「ドレージ」が今、崩壊の兆しを見せている。
東京湾のあるターミナルでは12月1日、朝から混雑が起き、ポータルサイトの所要時間予測で10時以降、通常の2~3倍とも言える「120分以上」という表示が並んだ。北九州港太刀浦コンテナターミナルは人手不足により2026年2月から日曜日に荷役作業を行わない完休日と設定した。
筆者は約10年前から、港湾ゲートの混雑やドライバー不足が進行する中で、ドレージ輸送の供給力が将来的に縮小するリスクについて、繰り返し警鐘を鳴らしてきた。しかし、この10年間で状況が改善したとは言い難い。むしろ、デフレ環境のもとで後回しにされてきた構造的な疲弊が蓄積し、当時予見されたリスクがより現実性をもって顕在化している。
データが示す「供給力の先細り」
ドレージ輸送の供給力の低下は、ドライバーの高齢化と人手不足によるところが大きい。東京都トラック協会の調査では、海上コンテナドライバーの平均年齢は52.6歳に達し、60歳以上が457人と全体の約2割強を占める。一方で20〜30代はわずか100人ほどにとどまり、年齢構成は高齢層に著しく偏った構造となっている。
この分布を30年まで延長して試算すると、現在60〜70歳代の層は5年後には第一線から退くことが予想され、保守的に見積もっても2割超が自然減となる。新規ドライバーの流入がなければ輸送力は現状比で8割を下回る。
コンテナトレーラーの運転手になるためには、普通自動車免許に加え、大型自動車とけん引免許が必要となる。ともに高額な費用と難関な実技試験の合格が求められる。若い世代がこうした免許制度の壁を越えて参入することは想像しづらく、構造的な人材枯渇が懸念される。

