2025年3月20日(木)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年3月12日

 働き方改革によるトラックドライバーの残業規制により、「物が運べなくなる」として大問題となった「物流2024年問題」。しかし2024年4月を迎えたとき、「物が運べなくなる」ことはなかった。
 では、2025年を迎えた今、問題は解決されたのか? 騒ぎは杞憂だったのか? 答えは否だ。表面上の対策は打たれたものの、根本の業界構造は何も変わらず、物流現場は限界を迎える日は、刻一刻と迫っている。
 本連載では、「2024年問題」を経た物流の現場を歩き、何が変わり、何が変わらなかったのかを分析する。
*本記事は『間違いだらけの日本の物流』(共著、ウェッジ)の一部を抜粋したものです。

Mitsuru Yamaguchi/GettyImages

 本連載ではこれまで、「2024年問題」を経て物流の現場で表出した、さまざまな問題を見てきた。これらに対して、行政側も無策というわけではない。まずその一つが、2023年7月、国土交通省が全国の運輸局に配置することを決めた「トラックGメン」である。

 行政が荷主に指導勧告する制度は、以前から存在していた。荷主勧告制度だ。荷主が、優越的地位や継続的な取引関係を利用して、無理な到着時間を設定したり、過積載を要請したりした場合には、行政が荷主を勧告する仕組みである。

 だが、長い間、この制度は十分に機能していないと指摘されてきた。なぜなら、同制度に基づく要請や働きかけの数が極めて少なく、最も強力な勧告や社名公表は、長年にわたり、発動された実績がなかったためである。その背景には、悪質な荷主がいても、運送会社は仕事を失うことを恐れて告発しないことがあると言われてきた。

 ゆえに、トラックGメンが創設されても、それがどれほど機能するものであるのか、当初、懐疑的に見られていた。だがトラックGメンのなかには、従来よりも踏み込んだ活動を行う者が現れた。

 例えば、中国運輸局のトラックGメンは、創設当初から、トラックステーションなどにいるドライバーに直接声をかけ、これからどこへ行くのか、行った先の荷主では待たされていないか、契約にない附帯業務をさせられていないかなどを尋ねる見回り活動を行ってきた。工場団地や流通団地など、企業が集積している地域に出向き、外観からバース(トラックが荷卸しをするための停車場)の位置を確認し、待機しているトラックがあれば、ドライバーに荷待ち状況や荷積み・荷卸し状況を聞く。さらに、荷主や元請け業者をアポイントなしに訪問し、違反行為の防止や運賃交渉に誠意ある対応を求め、注意喚起を行う。

 こうした「プッシュ型」の情報収集や「荷主等パトロール」が、最初は一部地域だけだったが、今では全国に広がっている。

 このような積極的な活動の結果、「働きかけ」や「要請」件数が飛躍的に増大した。2019年7月から2023年7月までは月あたり1.8件だったものが、2023年7月から10 月までは月あたり57件、さらに同年11月から12月の集中監視月間は月あたり106.5件となった。

 その後も2024年1月から9月までは月あたり68.4件と高い水準を維持している。そして2024年1月には、初めて荷主・元請けへの勧告と社名公表が2社に対して行われた。


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