2025年3月26日(水)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年3月12日

地域ぐるみで対策を練る

 地域の産業を守るために、動き出した自治体もある。愛媛県は2023年8月に「愛媛県持続可能な効率的物流検討会」を設置した。行政、地元のトラック協会、荷主を代表して経済団体や農林水産団体などが参加する。

 愛媛県は、ミカンをはじめとする柑橘類の生産が全国トップクラスであり、養殖の真鯛やブリなど水産物の水揚げ量も多い。これら県産品の多くが、関東圏をはじめ全国で販売されている。今後も「愛媛県産品を運び切る」ことを目指し、地元の関係者らによる本音での話し合いが始まった。

 同検討会は、「経済労働」と「農林水産」の2つのワーキングチームを立ち上げた。「経済労働」ワーキングチームでは、県内の製造業を対象に輸送実態に関するアンケート調査を実施し、運賃、待機時間、パレット化対応などの実態を把握しようと努めてきた。

 「農林水産」ワーキングチームでは、白熱した議論が交わされている。県の漁協組合は、パレット化を進め、車両を購入して集荷するなどの改善の動きがあり、さらに輸送コストの上昇に対応するため、産品の高付加価値化にも取り組んでいると話す。だが一部には、「うちには関係ない」とそっぽを向く水産業者や、販売日を1日遅らせてほしいとの要請に対して「魚が死んだら責任をとれるのか」と迫る事業者もいる。それに対しトラック協会から「ドライバーが過労で倒れたら責任とれるのか」と切実な思いを伝える場面もあった。

 また、ある産品において、荷主側は運賃の値上げを実施したと表明したが、トラック協会からは「燃料費高騰分しか上がっていない」「着地運賃であるため、行き先次第では経費さえもトラック事業者が負担している」との意見が出された。さらに、荷主側は荷卸し箇所を「2カ所以内」とすることや、緻密な出荷計画の実施に取り組んでいると説明したものの、トラック協会からは「未だに4~5カ所の荷卸しが当たり前で、改善されていない」「出荷計画は、今までも立てられていたが、全く意味がない」「対応が不十分なのに、解決したようなコメントは控えてほしい」などの苦言が呈された。

 他方、県は、検討会での議論を踏まえて、荷主事業者の理解を促すためのセミナーを開催するとともに、トラック事業者や荷主企業が取り組む物流効率化に資する機器の導入や施設整備にかかる費用を補助し、事業者団体が行う実証実験に対する支援を進めてきた。

 中長期を見据えた取り組みもある。例えば、同県の特産品であるミカンの収穫のピークは12月だが、師走はただでさえ繁忙期であり、以前から車両とドライバーの確保は容易でなかった。

 かつパレット化が進んでおらず、ドライバーが選果場に到着してから荷待ちと荷役で4時間超えとなる場合もある。現状のままでは改善基準告示を遵守した輸送は困難だ。パレット化を進めなければならないが、パレットのレンタル料など物流コストの上昇を生産者は負えないと主張する。それを商品価格に転嫁すれば、ミカンの価格が上昇せざるを得ず、消費者が離れるのではないかとの不安も高まる。


新着記事

»もっと見る