師走の東京駅ホームは大勢の人でごった返していた。その地下には一般の人が入れない区画があり、台車を押す作業員たちが通路を行き交う。台車に載っているのは新幹線に積み込む商品。駅構内の売店や自動販売機への商品搬送も行う。東京駅を人体に例えれば、酸素を体の隅々まで運ぶ赤血球というべき存在。それが、ジェイアール東海物流(JRTL)の果たす役割である。

名古屋駅直上の百貨店、ジェイアール名古屋タカシマヤの開業が2000年3月に決まり、百貨店商品の仕入れ・発送業務を行うため、1999年4月にJRTLが設立された。その後、2003年10月の東海道新幹線・品川駅開業に合わせ、構内にある売店などへの配送業務を開始。さらに東京、新横浜、名古屋など主要駅の構内でも順次、商品配送を始めた。「それまでは納品業者が直接売店などに商品を届けていましたが、荷捌き場を効率的に使う、駅構内のセキュリティーを確保するといった観点から配送業務を当社に一元化することになりました」とJRTL東京支店担当課長の阿部亜輝子さん(41歳)が説明する。
04年からは東京駅における列車への商品の積み下ろしをジェイアール東海パッセンジャーズ(現・JR東海リテイリング・プラス)から引き継いだ。これでJRTLが駅構内の物流を一手に引き受けるという体制が整った。
東京駅地下の荷捌き場には列車番号が記された台車がずらりと並ぶ。それぞれの台車には当該列車に積み込む商品が載せられている。東京駅では多い日には1日に230本以上の列車が発車する。このうち、グリーン車の乗客がスマホで商品を注文できる「東海道新幹線モバイルオーダーサービス」の対象となる「のぞみ」と「ひかり」の本数はおよそ200本。そのすべてに商品を積み込む。モバイルオーダーで売られている商品はホットコーヒー、アルコール、菓子、アイスクリームなど多岐にわたる。
台車を運ぶ社員は、列車番号を確認し、エレベーターでホーム上に出ると、人に当たらないよう注意しながら当該列車のもとに向かう。列車が到着すると、まずその列車が積んでいた商品を下ろして、新たに商品を積み込む。足りない商品だけ補充するのではなく、商品すべてを入れ替えることで、「新幹線の硬いアイスのクオリティーも守られます」(阿部さん)。