台湾最大野党国民党の鄭麗文主席が6月2日から訪米中である。4月に北京で習近平国家主席と会談したばかりで、トランプ大統領とも会談すれば短期間に米中首脳両方と個別に会談することになり台湾の野党党首としては異例のことだ。今のところトランプと会談する予定は入っておらず、米政府高官と会うにとどまる見通しとなっている。
静観する中国
そもそも訪米して米政府高官と会うような台湾要人と、習近平はなぜ北京で会談したのだろうか。そこには、鄭麗文の微妙な立ち位置がある。
台湾独立派の頼清徳総統に対し、独立に反対する立場をとる鄭麗文は、習近平にとって好ましく、また、米国からの大量の武器購入を遅延させるなどしたところも評価が高いと言える。そのような二人が会えば、温かい雰囲気に包まれてもおかしくはなかった。
ただ、実際は様子が少し異なった。習近平は鄭麗文に直接個別会談の機会を与えたとはいえ、その様子は相思相愛には見えなかった。高市・トランプ会談の時の高市首相のように、満面の笑みでぐいと身を乗り出す鄭麗文に対し、習近平は、表情を変えず半歩ひいたように見えた。身長178センチの鄭は、気を遣ってかハイヒールを履いていなかったが、それでも大きく見えた。習近平側は、頼清徳の民進党に対する牽制として会っているにすぎず、二人の温度差は大きいように見えた。
そして訪米である。これまでであれば台湾の要人が、訪米して米政府要人と会うなどということになれば、中国政府は、厳しく批判するのが常であった。ただ、今回はそのような批判は見えてこない。そこには今回訪米するのが習近平と会談したばかりの鄭であり、その訪米が中国の思惑と合致する部分が多いという特殊性がある。
鄭麗文は、北京で受け取った平和のメッセージを米国に伝えると明言している。ここでいう平和の内容は明らかにされていないが、台湾が独立することに反対するということとも考えられ、そうならば鄭が中国のメッセンジャーの役割を担っているとなる。また、鄭麗文の評価が訪米で高まれば、中国政府が厄介者とみなす頼清徳に対する当てつけになるという見方もできよう。
そして、台湾への米国の武器輸出を遅延・減額させた鄭麗文の訪米によって、米側の武器輸出を揺さぶると見る向きもあるかもしれない。
