2026年7月12日付フィナンシャル・タイムズは、中国の原子力潜水艦からの弾道ミサイル発射を踏まえ、米国、中国、ロシアの三者による核軍拡競争が展開しているとし、それへの対応を求める社説を掲載している。
数十年もの間、核軍拡競争は二者間のものであった。米国とソ連は、相互確証破壊の現実から紛争を避け、軍備管理に向かい、それにより緊張も核兵器も低減することとなった。今回、中国が太平洋において、潜水艦発射弾道ミサイルの実験を行ったことは、三者間の核軍拡競争という新たな状況が生まれていることを示すものである。
中国のミサイル発射は、太平洋上の長距離ミサイル発射実験として三回目である。中国は、長年、最小限核抑止に満足してきたが、今回のミサイル発射は、核戦力の拡大とともに、陸、海、空の三本柱構築への進展を示すものである。
中国が強大な核抑止力を超大国の必須条件としていることは疑いない。中国の核軍拡は、冷戦時の軍備管理の枠が壊れたことで拍車がかかっている。米ロの戦略核兵器の上限を1550に定めた10年の新戦略兵器削減条約(新START)は今年失効した。
中国とロシアが関係を緊密化させる中、米国、ロシア、中国の三者間の核軍拡競争は不安定な性格を持つ。中国の核弾頭数は、現在は約620とみられるが、30年までに1000に達する見込みであり、米国は、中国とロシアを合わせた核戦力に圧倒される事態を懸念している。
配備される戦略核についての法的な上限がなくなった今、米国では、貯蔵に回されている 1900の核弾頭を配備する誘惑が広がっている。そうすれば、2600の核弾頭を貯蔵しているロシアも追随するだろう。
米国、ロシア、中国が核弾頭の配備数を拡大するのを見れば、他国も自らの核能力を拡充させたり、保有したりするであろう。欧州とアジアの各国は、既にウクライナとイランにおける戦争、トランプ大統領が同盟国を守るために核の傘を用いるかの疑念、プーチン大統領の核の威嚇によって不安を抱えている。三つの超大国の核軍拡競争の脇で、中小国の間で核拡散が広がりかねない状況である。
状況を安定化させるための最善の方法は、ロシアと米国が新STARTを再導入しつつ、中国を含めた新たな合意について協議を開始することである。中国は、これまで自らの核戦力は米ロに比してはるかに小さいので軍縮協議には応じないとの姿勢を取っている。
