時系列の問題は、前記の第一の違和感とも関連するが、米ロ間の核軍縮・軍備管理の枠組みの崩壊は、中距離核戦力(INF)条約の失効が19年、ロシアが新STARTの運用を一部停止したのが22年、同条約が失効したのが本年2月である。中国の核軍拡はどう考えても、それらよりも前の時期に始まっている。
因果関係でいえば、INFも新STARTも、米ロ間の枠組みであり、中国はこれらに拘束されていない。米国には、こうした米ロ間の核軍縮・軍備管理の枠組みを維持することは、自らの手を縛る一方、中国を野放しにするとの問題意識があり、それがこれらの枠組みの廃棄・不継続の一因となった。つまり、この社説の議論とは逆に、「中国の核軍拡は、冷戦時の軍備管理の枠組みが壊れた一因となった」と見るべきである。
注目すべき核兵器国の合意
違和感の第三点は、今後に向けての処方箋である。この社説は「状況を安定化させるための最善の方法は、ロシアと米国が新STARTを再導入するとともに、中国を含めた新たな合意について協議を開始することである」と論じている。
前記の因果関係を踏まえれば、中国の核軍拡に歯止めがかかっていない状況で、米ロが新 STARTを再導入するという流れにはなりようがない。今後の核軍縮・軍備管理の枠組みは、中国を入れて何ができるかを議論するところから始めざるを得ない。
その意味で、5月の核不拡散条約(NPT)運用検討会議において、成果文書は採択されなかったものの、五つのNPT上の核兵器国(米、露、中、英、仏)が「国際間の緊張の緩和、国際平和と安定の促進、信頼の強化と戦略的リスクの低減のための建設的な対話を追求する」との文言に合意したのは注目すべき展開であった。この「建設的な対話」が実際にスタートするのか、どの程度、実質的なものとなるかは未知数であるが、そうしたところから糸口をつかんでいくしかないと考えられる。
