2026年7月13日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年7月13日

 2026年6月19日付フィナンシャル・タイムズ紙は、米国とイランとの交渉について、15年の合意に比して、イランの立場はより強硬になり、信頼関係は損なわれていて、状況は厳しいと指摘する英国の元イラン大使サイモン・ガスによる論説を掲載している。

(timyee/e-crow/Win McNamee/gettyimages)

 米国とイランが核問題、制裁解除、ホルムズ海峡の自由な通航といった問題を解決するために 60日間の交渉に入るに際し、「包括的共同作業計画(JCPOA)」として知られる15年の核合意の交渉の経験を振り返る意味はあろう。

 第一に、60日間は十分とは言えない。JCPOAの交渉は1年8カ月かかった。それだけ時間を要したのは、扱う問題が技術的で複雑で、さらに信頼が欠如している中、厳密さが求められたからである。

 ただウラン濃縮を止め、高濃縮ウランを廃棄すればよいという単純な話ではない。それ以外にも多くの問題に取り組む必要があった。国際原子力機関(IAEA)の査察官はイランの施設に赴くことができるのか、そのために何回通報が必要なのか等の問題に取り組む必要があった。

 イランは、長期的な戦略目標のために、経済的・政治的圧力が継続したとしても耐える用意がある。現在、イランの軍事部門、特に革命防衛隊の影響力は増し、革命防衛隊の中には、再び武力紛争が起こると考え交渉は別の形の戦争の継続に過ぎないと考えている者が多い。

 第二に、イランは、核計画について、期限を定めた制限を受け入れる用意はあろうが、完全に廃棄することは受け入れないだろう。核計画は国家の威信と主権に関わるものと捉えられ、そのためにイランは多額の費用をかけてきた。イランは、リビアやウクライナのような国が核の努力を放棄したために何が起こったのかを見てきている。

 第三に、交渉の際、イランからの譲歩には必ず見返りが求められる。JCPOAの交渉の際、イランは、アラクのプルトニウム生産炉の中核部分の破壊を早い段階で行うように求められ、経済制裁への救済措置と引き換えにそれを受け入れた。

 一方、経済制裁への救済措置は適切な形で実施されず、正式になされた際も、多くの企業が二の足を踏んだ。イランは同じ間違いは犯さないだろう。

 6月17日に米国とイランとによって電子署名された覚書は厳密さを欠き、双方が異なった解釈をとり相手方の悪意を非難する余地を残すものである。どちらにとっても相手の長期のコミットメントを信じることができない状況では、問題の種となり得る。

 今回の交渉は、15年の交渉よりも複雑なものとなろう。イランは、ホルムズ海峡を地域的抑止の中核的な要素と捉えている。そうした変化は、湾岸諸国やその周辺諸国の利害に死活的な影響が及ぶ。


新着記事

»もっと見る