いよいよ夏。夏といえば、カブトムシとクワガタムシである。今回は昆虫界のスーパースターに会いに行く。たとえば、東京都内。そこで案外出会えるのだ。
山手線沿線の駅の近くでも、今やカブトムシもクワガタムシも見つけることは難しくない。といっても、デパートの屋上やペットショップではない。公園や墓地の隅っこなど、都心の近所の緑地に棲んでいる。さらに、あの「玉虫厨子」で有名な、日本でいちばん美しい昆虫、タマムシにも割と簡単に出会うことができる。それは、なぜか。実は、昨今注目を集める「クマ被害」と同じ理由である。謎を解き明かしていこう。
カブトやクワガタは樹液の出る木に集まる。クヌギやコナラ、シラカシなどのいわゆる「どんぐりの木」が有名だ。読者の中には子どもの頃、秘密の「マイ樹液の木」を隠し持っていた方もいたのではないか。甘酸っぱい樹液の香り、カブトムシがツノをガシガシと突き合わせる音。夏の夜明けの思い出だ。でもその思い出は、都心ではなく「田舎のばあちゃん家」の裏山にあったりした。
ところが、ここ数年、都心では「樹液の出るどんぐりの木」が急激に増えている。戦後、緑地などに植えられた木々が樹齢60~70年、あるいは100年を超える老木になっていたりするからだ。結果、こうした老木の多くが「ナラ枯れ」を起こしている。ナラ枯れは、どんぐりの木の幹を食害するカシノナガキクイムシという甲虫が媒介となって「ナラ菌」が木々の中で増え、急速に枯れてしまう、恐ろしい伝染病である。
現在、日本は高齢化したどんぐりの木だらけだ。郊外や田舎では、薪炭林管理を1960年代にやめてしまったため、近郊林が軒並み老木ばかりになった。若い木はナラ枯れに罹らない。木の老人病である。そしてこの病気がカブトやクワガタ、タマムシを増やすのだ。
