自国の利益を守るために米国に頼ることができると確信を持てる国は少なくなっている。イスラエルは、自国にとって害のある合意が結ばれそうになれば、それを壊しにかかるだろう。イランは、将来、イスラエルからの攻撃を受けないような抑止を強化する地域的な取り組みを進めるだろう。
この紛争に引きずり込まれた国は、皆、敗者である。一方、覚書の署名は、イランも米国も全面戦争に戻りたくないと考えていることを示唆している。混乱に満ちたものとなろうが、交渉期限を何度も延長し、時に衝突が起こったりしつつ、交渉が長引くというのが、あり得るシナリオであろう。
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異なる二国間関係と地域情勢
今回の米国とイランの交渉を考える際、15年のイラン核合意が一つの参照となるが、この論説は、15年の交渉の際、英国チームを率いていた元外交官ガスによるものである。今回の交渉が 当時よりも困難であることを指摘し、60日間よりも交渉が長引くことを予想している。
第一に、今回は、15年よりも交渉で扱わなければならない範囲が広い。15年はイランの核計画をどう制限するか、制裁解除をどのように組み合わせるかが焦点であったが、今回は、それに加えて、ホルムズ海峡の扱い、軍事衝突の事後処理、地域紛争の収拾、今後の保障についても扱わなければならない。
先般、米国とイランが合意した「覚書」では、14項目が挙げられているが、その内、核・制裁解除という15年以来の問題に関わるのが5項目、ホルムズ海峡の扱い等新たな問題に関わるのが 5項目、今後の段取りなど総論的事項が4項目であった。
第二に、今回は、武力衝突した当事者間の交渉となる点で、15年とは事情が異なる。15 年当時も、米国とイランは互いに敵視し合っていたが、直接に戦火を交えたわけではなかった。ところが今回は、昨年6月、本年2月からと二度にわたって戦火を交えた同士で外交交渉をすることとなる。
イランは最高指導者ハメネイ師をはじめ多くの指導者を殺害され、市民にも被害が出ている。米国の被害は多くはないが、死者も出ている。
ガスも指摘しているように、イランからすれば、昨年以来二回にわたって外交交渉の最中に攻撃を受けた記憶は鮮明であろう。核計画への制限は、それを検証することが不可欠であるが、そのためには情報提供が前提となる。イランからすれば、情報を出せば攻撃の材料を与えることとなるとの心理が働くであろう。
