イランによるペルシャ湾岸地域での軍事行動により、日々大量の石油や液化天然ガス(LNG)が通過するホルムズ海峡は、事実上の封鎖状態に陥った。これにより、中東産油国は石油を十分に輸出できなくなり、石油消費国では中東産の石油やLNGの調達に大きな支障が生じている。特に、石油消費大国であるインドは深刻な打撃を受けている。
こうした中、インドはホルムズ海峡を迂回できる石油パイプラインを持つアラブ首長国連邦(UAE)とのエネルギー関係を強化しようとしている。一方、UAEにとってインドはイラン戦争を契機に、従来の経済パートナーにとどまらず、防衛分野でも重要な戦略的パートナーとしての存在感を高めている。
中東依存のインドのエネルギー輸入
ホルムズ海峡の通航困難により石油輸送が遮断される中、代替ルートは限られている。まずサウジアラビアには、東部アブカイクから紅海沿岸のヤンブーを結ぶ東西原油パイプライン(輸送能力日量500万~700万バレル)がある。次にUAEには、アブダビのハブシャーン油田地域からインド洋側のフジャイラ港へ通じるアブダビ原油パイプライン(150万~180万bpd)がある。
ただし、両国の輸送能力には制約があるため、これまでの石油輸出量である約2000万bpdを維持することは難しくなっている。また、LNGは主に専用のLNG運搬船で輸送されるため、ホルムズ海峡の通航制限の影響をより直接的に受ける。このため、カタールとUAEからのLNG輸出も大きく制約されている。
中東産油国のエネルギー輸出低迷は、インドにも深刻な影響を及ぼす。英国のエネルギー研究所によれば、石油消費量は15~25年に年平均3%増加し、25年時点で米中に次ぐ世界第3位となった。一方、国内の原油生産量は11年をピークに減少し、インドは国外から多くの原油を確保する必要がある。
近年は、ロシア産原油の流入がインドにおける中東産原油への依存低減にも寄与してきた。原油輸入量に占めるロシア産のシェアが17年の1%から25年には32%まで上昇した。一方、湾岸諸国やイラクからの輸入割合は63%から48%に低下した。
それでも、インドと地理的に近い中東産油国からの輸入は、輸送の日数および費用が他地域より少なく済み、安定的に調達できるため、エネルギー安全保障の観点で、インドにとって理想的な供給ルートである。
