加えて同覚書では、UAEのフジャイラに原油を貯蔵し、インドの戦略石油備蓄の一部として活用する構想が示された。また、インド国内でのLNG・LPG貯蔵施設をめぐる協力も盛り込まれた。
これらが実現すれば、インドは国内の地下備蓄に加え、ホルムズ海峡の外側に位置するフジャイラにも石油備蓄拠点を確保し、国内でのLNG・LPG備蓄も拡充することで、中東産油国からの供給途絶時の対応力を高められる。
防衛分野に広がる関係
エネルギー分野に続き、インドとUAEの協力は防衛分野にも拡大している。イラン戦争以前から、UAEは伝統的な安全保障パートナーである米国を軸にしながら、イスラエル、フランス、韓国などとも防衛協力を進めてきた。(参考:「イランが執拗に攻撃するUAEをフランスと韓国が防衛する狙い」)
こうした中、UAEはインドとの軍事関係の強化も加速させている。両国は二国間演習や高官交流を進めてきたほか、近年はフランスを交えた3カ国協力の枠組みでも連携を深めている。3カ国は23年にオマーン湾で初の合同海上演習、24年にはアラビア海で初の合同航空演習を実施した。
26年1月、UAEのムハンマド大統領は訪印時にモディ首相と会談し、戦略的防衛パートナーシップの構築に向けた意向書に署名した。同意向書は、共同訓練、防衛技術、防衛産業、サイバーセキュリティ、テロ対策など、幅広い分野での協力強化を視野に入れたものである。
ただし、この枠組みは正式な同盟関係や軍事基地の設置を盛り込んだものではない。また、25年9月にサウジアラビアとパキスタンが締結した戦略的相互防衛協定のように、一方への攻撃を双方への攻撃とみなす相互防衛義務を定めたものでもない。あくまで、防衛協力の制度化と能力構築を進めるための枠組みである。
それでも、UAEは安全保障面でのインドの重要性もより認識しつつある。その背景には、イラン戦争を通じて、UAEが弾道ミサイルやドローンを組み合わせた多方向からの攻撃に直面し、防空体制と軍事的抑止力の強化を迫られたことがある。
ロイター通信は26年6月、インド政府が超音速巡航ミサイル「ブラモス(BrahMos)」を含む主要防衛装備のUAE向け売却について協議していると報じた。また、売却候補に防空指揮統制システム「アカシュティール(Akashteer)」も含まれているとされる。こうしたインドによるUAE向け防衛装備輸出は、両国の安全保障関係を一段と強める契機となる。
インドとUAEの防衛協力は、装備品取引にとどまらず、防衛産業協力や先端技術、訓練・演習、海洋安全保障、情報共有などへと広がりを見せている。今後は、技術移転や共同生産を含む産業面での連携に発展する可能性もある。インド・UAE関係は、経済・人的交流を基盤としながら、防衛や地域安全保障を結びつける新たな戦略段階に入りつつあると考えられる。
