今年5月初旬、ベトナムを訪問した高市早苗首相は、トー・ラム国家主席と会談し、2年前に結んだ日越間の「包括的戦略的パートナーシップ」の強化で合意した。
さらにベトナム国立大学ハノイ校で政策演説を行い、日越間で協力を進めるべき分野として宇宙や半導体を挙げた後、これまで日本が提唱してきた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の「進化版」を提唱した。
そして「進化したFOIP」の具体案として、「アジア・エネルギー・資源供給力強化パートナーシップ(パワー・アジア)」をはじめとするエネルギー協力、「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」で海底ケーブルやオープンRAN、通信衛星やオール光ネットワークを内容とする「FOIPデジタル回廊構想」に触れた。
これらは単なる外交スローガンではない。これらの協力項目は、昨年11月に日本政府が立ち上げた成長戦略会議が掲げた、日本が特にその発展を促すべき17の戦略分野と重なる。すなわち、日本は経済安全保障やエネルギー安全保障を確保しつつ、AI、半導体、GX、DXといった先端分野を通じた成長を実現するために、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含むインド太平洋との連携を不可欠と位置づけている。
他方、経済発展を遂げたとはいえ、ASEAN諸国にも切実な事情がある。コロナ禍での打撃は、完全に癒えたとはいえない。そして多くの国が直面しているのは、一定程度の経済成長は遂げてもそこで足踏みしてしまう「中進国の罠」である。さらに、投資も人も吸収して成長する各国首都をはじめとする大都市圏と、その他の地域との格差も大きい。
象徴的なのはインドネシアである。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、2025年の同国の名目国内総生産(GDP)は約1兆5000億ドルに達し、いずれは日本(25年は4兆4000億ドル程度)を抜くという予測もある。しかし、インドネシアの一人当たりのGDPは約5000ドルに過ぎず、日本の約35000ドルの7分の1に過ぎない。
一方、首都であるジャカルタ特別州の一人当たりのGDPは、約23000ドル 。少なくとも都市部に居住するASEAN諸国の人々と我々との生活水準に大差はなくなっているが、同時に深刻な国内格差を抱えていることもうかがえる。

