政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2026」で掲げる「攻めの予防医療」。病気の早期発見・早期介入などにより人々の健康増進を図ろうとする取り組みで、世間では医療費抑制への期待も根強い。しかし、現在の医療システムそのままに行うのであれば、医療機関を潤すだけのバラマキとなり、医療費高騰は避けられない。
膨らんだ医療費のツケを払わされるのは未来を担う若者たちだ。予防医療で国を滅ぼさないための処方箋とは――。
健康になっても減らない医療費
「攻めの予防医療」は、これまでの受動的な医療(病気になってから治療する)のあり方を変革する国家戦略だ。データヘルス・医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、保険者機能の強化、健康づくりを支えるインセンティブ・制度の整備などを通じ、予防・健康作りを社会全体で推進する方針が示されている。切れ目のないリハビリテーションの確立や認知症の早期対応など、高齢化社会を見据えた仕組みづくりとしては理想的な内容といえる。
今回は〝攻めの〟とうたっているが、国が予防医療に取り組むことはこれが初めてではない。「健康日本21」や「特定健診・特定保健指導(メタボ健診)」などで予防医療を推進してきた。その背景に、「予防によってみんなが健康になれば病院に行く人が減り、医療費も下がる」という期待があった。
しかし、その後の実証データや研究により、「予防医療では医療費を削減できない」ことが明らかになっている。実際、健康日本21が始まった2000年度に約30兆円だった医療費は、23年度(推計)に48兆円となり過去最高を更新。個人の健康寿命の延伸や死亡率の減少といった健康増進の成果が上がったにもかかわらず、医療費は増え続けている。
その理由は、医療技術の高度化や高額な新薬の登場、そして長生きする高齢者そのものが増加したことにある。予防によって発症や重症化を遅らせても、それは医療費がかかるタイミングを先送りしているに過ぎず、最終的に生涯で消費する医療費の総額が減るわけではないからだ。
