2026年4月20日(月)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年4月20日

 自分の健康は自分で守ろうというセルフメディケーションの重要な手段になっているのが健康食品である。国民の少なくとも3分の1が利用しているという調査もある。健康食品の利用者の中には医薬品を摂取している人も多い。

(ronstik/tadamichi/gettyimages)

 厚生労働省は、両者を併用することが副作用を引き起こす可能性があるとして、「絶対禁止」ではないが、「併用時には医師・薬剤師に相談すること」を強く推奨している。ところが両者を併用する患者の7割が医療従事者に申告しないという「沈黙の併用」が横行しているという。

 それでは、併用が原因の健康被害が続発しているのだろうか。もしあれば大きな社会問題になってもおかしくないが、そのような話は聞かない。医薬品と健康食品の併用のリスクについて考える。

ソリブジン事件とお薬手帳の誕生

 併用のリスクが最も大きいのは医薬品と健康食品ではなく、作用が強い医薬品同士である。複数の医薬品を併用する「多剤併用」は、特に高齢者において重大な相互作用や副作用を引き起こしてきた。

 その一つが、帯状疱疹治療薬による「ソリブジン事件」である。1993年にソリブジンが発売され、それからわずか1カ月余りの間に、フルオロウラシル系抗がん剤との併用によって15人の患者が死亡したのだ。原因は、ソリブジンの代謝物が抗がん剤の代謝酵素を強く阻害したため、抗がん剤の血中濃度が異常上昇し、骨髄抑制による深刻な白血球の激減を引き起こしたためである。

 当時は複数の病院を受診していても病院間の情報の共有手段がなく、医師や薬剤師が他院での処方内容を把握できなかった。その結果、同じ効果がある医薬品の重複投薬や、禁止されている組み合わせの処方が見過ごされるという、深刻な状況が存在したのだ。

 この惨事を受けて、リスクがある医薬品を処方・調剤をする医師と薬剤師の注意義務の強化と、患者自身が全ての服用薬を記録し、どの医療機関でも提示できる「お薬手帳」が制度化された。


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