どんな対策が必要なのか
多くの人が医薬品と食品や健康食品を併用している。しかし、それで問題が起こるのは、ごく一部の「リスクが高い医薬品」を服用している病状が重い患者である。医薬品と食品や健康食品の相互作用による健康被害を防止するためには、リスクが高い薬剤を服用している患者を重点的に管理することである。
具体的には、医師が医薬品を処方する時には、既往歴、併用薬、健康食品の使用を確認し、相互作用の可能性を確認する義務がある。調剤を行う薬剤師についても、血液凝固阻止剤、抗てんかん剤、免疫抑制剤などのリスクが高い薬を調剤する際には、「嗜好品(カフェイン・喫煙等)や健康食品の摂取状況」を確認し、相互作用の有無をチェックすることが義務付けられている。さらに、機能性表示食品の届け出を行う企業には、届け出る食品の有効成分と医薬品の相互作用について確認することが求められている。
このような対策に加えて、「お薬手帳」への記入が求められているのだが、それは「すべての患者を厳密に監視するため」というよりは、「医療者が個別指導を行うための手がかりを患者に作ってもらうため」と言える。医師や薬剤師による個別の注意喚起こそが「安全の要」だが、その実効性を高めるためのデータ基盤として、「お薬手帳」があると位置づけられるのだ。
ただし、多くの患者が「怒られる」「否定される」ことを恐れて申告していない現状を鑑み、医師や薬剤師は、健康食品を利用する患者の心情に寄り添って、十分に説明をすることが不可欠である。
ハイリスク医薬品はどれか?
多くの医薬品は、ある濃度以上で効果があるが、それ以上の濃度では副作用を起こすという性質がある。治療に使用するのは、最小有効濃度と最小中毒濃度の間の濃度だが、この2つの濃度の差が小さい場合には、わずかな濃度の低下で効果がなくなり、わずかな濃度の上昇で中毒(副作用)が起こってしまう。
これは「効く量と危険な量がほぼ隣り合っている薬」と呼ぶこともできるのだが、専門的には「ハイリスク医薬品」と呼んでいる。そして、他の医薬品や食品により、これらの医薬品を代謝する酵素が阻害されたり、誘導された時には、その濃度が上昇や低下し、問題が起こる。
代表的なハイリスク医薬品としては、血液の抗凝固薬であるワルファリン、抗てんかん薬であるフェニトイン、強心薬であるジゴキシン、免疫抑制薬であるタクロリムスなどがある。これらはまた「生命維持に直結する薬剤」でもあり、その濃度が低下すると、短時間〜数日以内に生命に重大な危険が及ぶことがある。
治療域の狭い薬剤や生命維持に直結する薬剤を使用している患者は、全体から見ればごく少数である。そのような患者が、医薬品と健康食品を併用することについては、十分注意すべきことは当然だが、その対策として、医薬品を摂取しているすべての人に対して注意を求めることは現実的ではない。ハイリスク医薬品を摂取している患者に対して、担当医や薬剤師が個別に注意することが重要であり、効果があるのだ。
「医薬品と健康食品の相互作用で重篤な状態になる人もいる」などと聞くと恐ろしくなる。しかし、それはリスクが高い医薬品を摂取している患者の話であり、そのような医薬品を処方する医師と調剤する薬剤師が、患者に対して個別に十分な説明と注意を行うことで、ソリブジン事件の再発を防いでいる。
筆者自身も生活習慣病の医薬品を複数摂取しているが、それらはリスクが高い医薬品ではない。だから医師からも薬剤師からも、健康食品について何の注意もない。ということは、健康食品との相互作用の心配はないということだが、念のために、お薬手帳に記載して、薬剤師に見てもらうようにしている。
