経済安全保障を確保するために注目が高まっているのが造船だ。国土交通省は昨年12月、10年後の2035年に、新造船の建造目標を現状の900万総トンから1800万総トンに倍増する「造船業再生ロードマップ」を発表した。
長年にわたり業績悪化に苦しんできた造船業界には追い風が吹き始めている。深刻な現場要員の人手不足、資材価格の高騰が続く中で、日本の造船業は果たして先を行く中国、韓国に追いつくことはできるのか。政府が描くような〝造船ニッポン〟の復活は可能なのか──。
凋落が続いた日本の造船業
台頭した中国、韓国
1980年頃まで世界の商船の約半分近くを建造していた日本だが、それ以降、シェアは大きく減少した。
背景にあるのは、韓国、中国の台頭だ。韓国は90年代に、中国は2000年代に大きく伸張し、24年時点では、中国のシェアが71%と圧倒的で、韓国が14%、日本は8%と低迷している。
日本の造船業は不況が長期化していたため、再編縮小の波が押し寄せた結果、ドックの縮小が相次ぎ、人も離れていった。三菱重工業、石川島播磨重工(現・IHI)といった1980年代頃まで造船を牽引していた名門企業の多くが規模縮小を迫られた。タンカーなど簡単な構造の大型船は、建造コストの安い中国や韓国に太刀打ちできなくなった。大学からは造船学科の名前が消え、国土交通省にあった海事局造船課も2008年の組織改正で船舶産業課と変更になった。
かつては輝いていた造船ニッポンの凋落ぶりを象徴しているのは、LNG(液化天然ガス)運搬船を建造できなくなったことだ。LNGは重油よりも二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないなどの利点から、00年代に入って世界的に需要が急増した。これに伴い新造船の要望が大きく伸びる中で日本の造船会社のLNG船も存在感を保っていたが、日本が得意とした、「おわん型(球形)」タンク(モス型)の船よりも、「箱形」タンク(メンブレン型)の方が運送効率の良いことが分かり、モス型にこだわった日本勢はあっという間にLNG船の建造技術に立ち遅れてしまった。19年以降、日本でLNG船の建造実績はゼロのままだ。
だが、日本の電力会社などは豪州をはじめとする海外からのLNG輸入が多く、エネルギー安全保障の観点から日本でも建造すべきだという議論が起きており、再開する動きが出ている。
だが、モノづくりの技術は一度絶えると、一朝一夕で取り戻すことは困難だ。国交省の調査によると、造船業で働いている人員は、16年は約9万1000人いたが、22年にはコロナ禍もあって6万8000人まで減少した。25年は外国人労働者が増えるなどして7万6000人と増加に転じたが、現場の作業員の確保が厳しくなる一方だ。
