2026年4月20日(月)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年4月20日

医薬品と健康食品の併用

 医薬品と健康食品を併用する人は多い。医療機関を受診している患者の健康食品の利用率は、外来患者の37%、入院患者では18~49%に達している。そのうち、医師に医薬品と健康食品を併用している事実を伝えた人は約3割だ。併用の被害を防ぐ対策が取られていない形だが、被害者が続出しているのだろうか。

 これを調べた2018年の論文がある。国立健康・栄養研究所が作成している「健康食品の安全性・有効性情報」というデータベースに収載された症例報告から、医薬品と健康食品の併用事例を抽出して分類したものだ。

 報告された71人の患者事例のうち、53.1%(34人)が重篤な状態だった。症状で最も多いのが肝障害、次いでてんかん発作などの精神神経系障害、そして高カリウム血症、低血糖などの代謝・電解質異常である。

 これらの患者が服用していた医薬品は、抗てんかん剤、抗悪性腫瘍剤、不整脈用剤、血液凝固阻止剤などであり、その血液濃度の変化が副作用に結びつきやすい薬剤だった。論文の著者は、71人の症例のうち、42人については医薬品と健康食品の相互作用の結果ではないかと推定しているが、確定的な結論を得ることが難しく、「相互作用疑い事例」の警告と解釈される。

 医薬品と健康食品の相互作用において、因果関係を確定することは簡単ではない。例えば、03年以降、ワルファリン服用者がクランベリージュースを摂取した結果、血液凝固の異常が起こって死亡する症例が複数報告された。英国や米国の規制当局は警告を発し、添付文書への記載を求めたのだが、その後の臨床試験では、通常の摂取量のクランベリージュースを飲用しても、ワルファリンの血中濃度や血液凝固には有意な変化は見られなかった。

 その理由として、真の理由はクランベリージュースではなく、患者の生活習慣である可能性、患者が臨床試験よりずっと多量のクランベリージュースを飲んでいた可能性、患者が飲んだクランベリージュースに何かの活性成分が含まれていた可能性などがあるが、それほど真実の解明は困難なのだ。

 しかし、基礎研究レベルでは、市販されている健康食品素材の約40%が代謝酵素を誘導し、約20%が細胞障害性を起こすことが観察されている。代謝酵素の活性に影響する素材には、セイヨウオトギリソウ、ウコン、イチョウ葉、クランベリー、ノニなどがあり、血液濃度の変化が副作用に結びつきやすいハイリスクの薬剤を服用している患者では注意が必要である。

健康食品の服用を申告しない理由

 医薬品の併用による健康被害の予防は、医師と薬剤師による注意と「お薬手帳」で大きく進展した。一方で、医薬品と健康食品の併用問題については、管理が追いついていない。

 多くの患者が服用の事実を担当医や薬剤師に伝えず、「お薬手帳」にもその事実を記入していないのだ。その表向きの理由は「食品なので言う必要がない」「食品が医薬品の作用に影響するはずがない」という認識だが、その背後には医療従事者との「関係の問題」が潜んでいる。

 多くの調査において、患者が健康食品について相談しない心理的要因として、「怒られる」「否定される」「無駄だと言われる」ことへの恐怖や嫌悪が挙げられている。多くの医師や薬剤師は、健康食品は科学的根拠が不明確であり、効果があるはずがないと誤解している。

 その結果、健康食品に対して否定的な態度を取りやすく、患者に対して「頭ごなしに否定」してしまう。その根拠は、厚労省の「健康食品の正しい利用法」という広報パンフレットに、「飛びつく前に、よく考えよう!」と題して、健康食品のリスクだけを並べていることである。

 患者は「この先生には理解してもらえない」と感じ、以降、重要な情報であっても健康食品の利用を隠す「沈黙の併用」になってしまうのだ。この「否定的な空気」が解決されない限り、たとえ「お薬手帳」に記入欄を設けたとしても、患者が真実を記入することは難しく、一元管理は絵に描いた餅に終わる可能性がある。


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