「薄明り黄昏とんぼは橋のうへ青くつきりと俊敏に飛ぶ」
今年の歌会始で披露された悠仁親王の歌は、日本の原風景を彷彿とさせるものだった。悠仁親王がトンボに強い関心を示されていることはよく知られるが、トンボに代表される「生活環境動植物」の保全に向け、農薬の再評価に新たに「長期影響評価」が加わる。
評価対象は魚類、甲殻類、鳥類だが、その目的はトンボが舞うような豊かな生態系の維持にある。生物多様性の保全は当然必要だが、その一方で、再評価の長期化や使用制限の可能性など食料安全保障に及ぼす影響も懸念される。
次世代への影響を調査
農薬の再評価制度は、すでに出回っている農薬の安全性を最新の科学水準に照らして定期的にチェックする仕組み。2018年の農薬取締法改正を経て、21年度から正式に運用が開始された。
再評価では、生活環境動物(鳥類、魚類、甲殻類、昆虫、水草など)への影響試験を追加。とくにミツバチへの影響評価をしっかり行うようになったのはこの時からだ。
制度が始まって5年が過ぎた今年、新たに長期影響評価が加わることになった。これまでの評価が「短期間で死ぬか否か」という急性毒性をみていたのに対し、長期影響評価は「正常に成長できるか」「次世代を残せるか」など繁殖への影響を調べる。
背景に、環境省の中央環境審議会で1月、農薬の再評価に長期ばく露影響評価を導入するよう、環境大臣に答申がなされたことがある。答申にいたった背景には、低濃度の農薬が長期間ばく露することでこれらの動植物の成長に影響が出るケースがあり、とくにトンボなど脱皮を繰り返した後に成虫するような生き物では繁殖に大きな影響が出ているとみられることがあった。
こうした影響は急性毒性をみるだけでは分からず、慢性的な毒性評価が必要となったのだ。これは生物多様性の保全という観点からは当然といえる判断だろう。
