2025年12月18日(木)

食の「危険」情報の真実

2025年12月18日

 「なるべく使わない方がいい」「健康によくない」などネガティブなイメージがある農薬。しかし、日本が開発した農薬は世界の食料生産と飢餓問題の解決に不可欠な役割を果たしていることをご存じだろうか。

(fotokostic/gentlelight/gettyimages)

 欧米のメガファーム(巨大製薬企業)が支配する世界の農薬市場において、日本企業は驚くべき存在感を放っているのだ。その強さの秘密は、高い安全性と効果を両立させる日本の緻密な化学合成技術と世界に類を見ない創薬力がある。

「職人技」が光る合成技術

 農薬業界の世界市場シェア(売上高ベース)ではシンジェンタ(スイス)やバイエル(ドイツ)はじめ上位5位までを欧米のメガファームが占め、市場シェアの6割を握る。日本企業は住友化学やクミアイ化学工業などがこれに次ぐ準大手のポジションにいる。

 しかし、農薬の開発にとって重要な新規有効成分の創出数において世界全体の30~40%という驚異的なシェアを維持し続けている。しかも日本企業が開発した新規有効成分は、安全性や環境適合性に優れたユニークな作用機序を持つものが多く、世界の農業生産と病害虫管理に貢献してきた。

 日本の農薬企業が世界で驚異的な強さを見せているのは、農薬開発に日本人が得意とする「職人技」が生かせることがある。医薬品の開発に携わったこともある唐木英明・東大名誉教授(専門は薬理学、食品安全など)は「抗体医薬などバイオテクノロジーが主流の医薬品と異なり、農薬は今でも有機合成化学の世界で、これは日本人が得意とする分野。炭素や水素の原子をパズルのように組み合わせ、狙った害虫だけを倒して作物は守る〝魔法の化合物〟を作るのは、まさに日本の職人技の世界なのです」と説明する。


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