2025年12月18日(木)

食の「危険」情報の真実

2025年12月18日

世界的な追い風も、さらなる強みを持つ時

 農薬のイメージの悪さは日本だけでなく海外も同様だ。世界的に「環境にやさしい農業」へのシフトが進められており、日本も50年までに化学農薬の使用量を減らす目標を掲げている。

 農薬企業には逆風に見えるが、実は日本の農薬企業にはチャンスでもある。環境負荷の高い古い農薬が淘汰されれば、日本企業が開発した「少量で効く、安全な高機能農薬」の出番が増えるからだ。

 ただ、同様に今後利用が増えるとみられる「バイオ農薬」で日本は後塵を拝している。日本企業の強みである「有機合成」はあくまでも化学物質を作る技術で、生きた微生物や天然抽出物、RNAi(RNA干渉)などを利用するバイオ農薬の分野で日本は欧米のベンチャーやメガファーマに大きく後れを取っているのだ。もちろん、これではいけないと国内の農薬企業ではこの分野に巨額の投資をして開発を進めているところもある。

 唐木名誉教授は「農薬産業は『有機合成力』という刀一本で世界と渡り合っているサムライのような存在で、これは間違いなく日本の宝だ。ただ、今後は有機合成とバイオの二刀流が必須。刀を捨てることなく、新たな装備を身につけて、世界をリードし続けてほしい。そして、多くの人に、農薬が作物を守り、世界を飢えから救う技術であることを理解してほしい」と話している。

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