2026年2月18日(水)

トランプ2.0

2026年2月18日

 日米外交における一大イベントと言えば、日米首脳会談であろう。ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)は、3月19日で開催を調整中の日米首脳会談をどのように位置づけているのだろうか。

 本稿では、まずトランプと政策別の支持率を紹介し、次に彼の元側近スティーブン・バノン氏とトランプがどのようにして11月3日の中間選挙に勝利しようとしているのか説明する。そのうえで、次の日米首脳会談と中間選挙の関係について述べる。

昨年10月の日米首脳会談(Andrew Harnik/gettyimages )

厳しい状況

 トランプは国内外の政策において成果が出ず、厳しい状況に置かれ、米国民の彼に対する支持率は低迷を続けている。世論調査で定評のある米クイニピアック大学(東部コネチカット州)が行った登録した有権者(registered voters)を対象にした全国世論調査(2026年1月29日~2月2日実施)では、トランプの支持率は「支持する」37%、「支持しない」56%で、「不支持」が「支持」を約20ポイントも上回った。

 政策別にみると、経済政策の支持率は「支持する」39%、「支持しない」56%で、「不支持」が「支持」より17ポイント高かった。一方、外交政策の支持率は、ベネズエラへの軍事行動の行使と特殊部隊によるニコラス・マドゥーロ大統領拘束により「強いトランプ」をアピールしたが、「支持する」37%、「支持しない」58%で、「不支持」が「支持」よりも21ポイントもリードした。では、トランプの「強み」である移民政策はどうだろうか。

 2016年、20年および24年の米大統領選挙において、トランプは、移民政策を選挙戦の柱にし、不法移民と犯罪を結び付け、彼らに寛容な民主党系の“聖域都市”を非難して支持を得た。しかし、移民政策までも「支持する」38%、「支持しない」59%で、今では米国民の間で不人気だ。

 このような数字が出てくる背景となったのが、中西部ミネソタ州ミネアポリスでの移民摘発作戦における米国籍の2人の射殺事件であった。事件については、連日米国で報道され、エプスタイン事件に取って代わった。日本でも各局が取り上げたニュースであったので、読者の皆さんもよくご存じであろう。

 2026年1月、白人女性と男性が、トランプが不法移民を拘束するために派遣した連邦政府の職員によって射殺されるという衝撃的な事件が発生した。その生々しい映像がテレビやネット上で繰り返し流れた。事件後に行われたクイニピアック大学の同調査では、トランプ政権の不法移民の扱いについて、60%が「厳し過ぎる」と回答し、「移民関税捜査局(ICE)はミネアポリスから撤収すべきだ」と答えた。

 2026年2月12日、国境警備責任者のトム・ホーマン氏は摘発作戦成功の認識の下で、作戦終了を発表した。翌13日、トランプは自身のSNS(交流サイト)に「移民関税捜査局はとても良い仕事をした」と投稿した。

 トランプは不法移民排除に賛成する米国民、特にMAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)に「力強さ」をアピールし、支持率のアップを狙った。しかし、移民関税捜査局や税関国境警備局(CBP)の職員等による市民に対する「非人道的」な行動により、彼の思惑は外れた。

 このような状況の中で、共和党の重鎮でトランプを強く支持するリンゼー・グラム上院議員(南部サウスカロライナ州)は、「銃撃事件に注目が集まらない方法をトランプ政権は打ち出さなければならない」と述べた(米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版 1月27日付)。

逆効果のバノン発言

 しかし、グラムの警告にも拘わらず、「トランプ1.0」で主席戦略官を務めたバノンの「バノンズ・ウォー・ルーム(Bannon’s War Room)」でのある発言が、米メディアの注目を集め、米国民の目を移民関税捜査局に向けさせることになった。

 バノンは中間選挙で、投票所の敷地に移民関税捜査局の職員を派遣することを、トランプに求めた。移民関税捜査局の職員に恐怖心を抱く反トランプの有権者は、自分が拘束されるのではないかという不安を抱き、家に留まり、投票所に行かないかもしれない。それは民主党に不利に働く。バノンの狙いは明らかだ。

 キャロライン・レビットホワイトハウス報道官は、米公共放送(PBS)の記者からのバノン発言に関する質問に対して、トランプが中間選挙で移民関税捜査局の職員を投票所の敷地に派遣する計画を議論しているのを聞いたことがないと答えた。

 米国では連邦選挙であっても、州法に従う。詳細は州によって異なるが、選挙運動に係わる人々は、投票所の敷地に近づける距離の制限がある。

 ちなみに、英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2026年2月6~9日実施)では、「2026年中間選挙で、移民関税捜査局の職員が投票所の敷地に入るのを禁止するべきか」という質問に対して、57%が「はい」、29%が「いいえ」、14%が「分からない」と回答し、「はい」が「いいえ」を28ポイントも上回った。

 しかし、MAGA支持者に限ってみると、73%が「いいえ」と答え、14%の「はい」を大きくリードした。MAGAは、投票所の敷地への移民関税捜査局の職員派遣を強く支持している。

 この話題が思い起こさせるのは、トランプとヒラリー・クリントン元国務長官が戦った2016年米大統領選挙である。トランプ支持の白人至上主義者が投票所の周辺を「警備」し、民主党支持の非白人の有権者に圧力と脅しをかけた。今回の中間選挙で、白人至上主義者や移民関税捜査局の職員が、激戦区の投票所の周辺を「警備」しないとは言い切れない。


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