2026年2月18日(水)

トランプ2.0

2026年2月18日

何でもあり

 バノンが中間選挙で反トランプ票を減らす戦術について言及し、一方、トランプは共和党が選挙で敗れた場合、どのようにして選挙結果を覆すのか策略を練っている。仮に同党が下院で多数派を落とせば、3回目の「トランプ弾劾」の可能性は高まり、政治的求心力を失い、レイムダック化を回避できなくなるからだ。

 そこで、トランプはある行動に出た。トゥルシー・ギャバード国家情報局長官が南部ジョージア州フルトン郡に入り、2020年米大統領選挙の選挙データを押収した。トランプは20年の大統領選挙で「不正」があったと訴えてきたからだ。トランプはギャバードに指示を出していないと言っているのだが、彼が彼女をフルトン郡に送ったとみるのが自然だ。

 米憲法は、選挙の管理は連邦政府ではなく、州の権限であり分権を尊重している。にもかかわらず、トランプは選挙管理のいわゆる「国営化」を図り、権限を州から奪おうとしているのだ。

 その意図に基づいて、トランプは選挙制度改革法案「The Safeguard American Voter Eligibility(SAVE) America Act」を作成した。連邦選挙の投票登録時に、全ての有権者が米国市民であることを証明できる有効な身分証明書(ID)の提示を義務化する。パスポートや出生証明書が必要になるのだ。

 この法案は2026年2月11日、連邦議会下院で可決したが、上院では通過していない。上院では法案成立に60票が必要だが、現在共和党は53議席である。しかも、リサ・マコウスキー上院議員(共和党・北西部アラスカ州)が、この法案に反対している。その対策としてトランプは、中間選挙までに選挙制度改革に関する大統領令に署名する方針だ。

 トランプのこの選挙制度改革法案については、問題点が指摘されている。メリーランド大学の調査によれば、2130万人以上の投票資格のある米国民が、市民権があることを証明できない。選挙権を「剥奪」してしまうことになるのだ。その内訳は、約970万人の民主党支持者、710万人以上の共和党支持者および約460万人の無党派層であると言う。法案が成立すれば、共和党よりも民主党に影響を及ぼすことになる。

 特に民主党を支持する黒人、ラテン系や低所得者に負の影響が及ぶことは避けられない。また、女性の有権者にもダメージを与える。女性は、結婚後の姓が出生証明書やパスポートに記載されていないケースが多い。民主党は共和党よりも女性から支持を得ている。トランプはそこを狙って、民主党支持の女性票を減らしたいとも考えられる。

 さらに、トランプの選挙制度改革法案では、疾病、障害、軍務、旅行の場合を除き、郵便投票を禁止するという内容になっている。2024年米大統領選挙では、約4分の1の民主党支持者および約5分の1の共和党支持者が、郵便投票を利用した。トランプが郵便投票を禁止する理由は、「不正」があるからではなく、民主党支持者が共和党支持者よりも郵便投票を活用するからだ。

 選挙管理に関するエコノミストとユーガブの全国世論調査結果をみてみよう。同調査では「連邦政府の選挙において、票を数えることに責任があるのは、連邦政府か州政府か」という質問に、17%が「連邦政府」、55%が「州政府」、28%が「分からない」と回答した。過半数は州政府にあると理解している。しかし、MAGA支持者は35%が「連邦政府」、39%が「州政府」、26%が「分からない」と答え、連邦政府と州政府の差が全体の回答よりも小さい。

 連邦政府による選挙管理に関して、トランプの狙いはどこにあるのか。中間選挙で、特に下院において共和党が敗れた場合、トランプは「民主党による票の操作があった」と主張する。そして、激戦区の投票用紙や自動投票機などを押収して、「数え直し」をさせる――票数の過ちがあったと述べ、選挙結果を覆すシナリオを描いているのだろう。トランプは今、そのレールを敷いているのだ。


新着記事

»もっと見る