2025年12月29日(月)

トランプ2.0

2025年12月29日

 2026年米国では、3大イベントが待ち受けている。政治においては、中間選挙が11月3日に行われる。全米的には、7月4日の建国250周年である。その7月を挟んで、6月11日から7月19日まで北米で開催されるFIFAワールドカップである。

 後の2つはある意味、中間選挙のキャンペーンの中で取り行われるものであって、ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)はこの機会をとり逃すはずはない。トランプは、建国250周年とFIFAの盛大な祝賀行事を最大限に利用することは間違いない。

 トランプの目下の最大の関心は、後で詳しく述べるが、分裂しかけたMAGA(米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)を元に戻すことである。以下では、MAGAと中間選挙について考えてみる。

(Bill Oxford/gettyimages)

グリーンの「MAGA対アメリカファースト」

マージョリ―・テーラー・グリーン氏(出所・米下院事務局)

 実業家から一気に政治家に転身したマージョリ―・テーラー・グリーン氏(共和党・南部ジョージア州第14選挙区選出)は、2020年の連邦下院議員選挙で勝利を収め、21年から下院議員を務めてきた。20年米大統領選挙で不正があったと訴え、選挙結果を覆そうとしたトランプを支持した。

 一般教書演説やトランプ集会においてMAGAの赤い帽子を被って参加するなど、トランプに忠誠心を示し、米議会ではMAGAのリーダー的存在となり、その攻撃的な口調で脚光を浴びた。グリーンによれば、下院の法案に対する彼女の投票記録は、98%トランプの政策と一致していたと言う。

 しかし、グリーンは未成年者に対する性犯罪で起訴されたジェフリー・エプスタイン氏(2019年拘留中死去)を巡る問題では、トランプがエプスタインから被害を受けた元少女たちを擁護していないと批判した。さらに、トランプが物価高や住宅費高騰など国内問題を優先しないで、カリブ海沖の“麻薬密輸船”爆撃やベネズエラの石油タンカー拿捕などにエネルギーを注いでいると非難した。

 米有力紙ワシントン・ポスト(2025年12月15日電子版)によれば、MAGAは、トランプが「外務に時間を割いている」「2024年米大統領選挙で公約した物価高対策に時間を費やしていない」「億万長者と緊密に協力している」「エプスタインの捜査資料の公開に抵抗している」とみており、MAGA本来のアジェンダを追求していないと捉えている。グリーンは、彼らの声を代表して発言したが、トランプと対立し、結局、2026年1月5日付で議員を辞職することになった。

 2025年12月に放送された米公共放送の番組で、グリーンは事務所等に773件の「殺害の脅迫」があったと述べた。その中には、息子を殺害の対象とした脅迫も含まれていたと言う。

 同月に放送された米CBSニュースとのインタビューでは、グリーンは、トランプとエプスタインの捜査資料について会話をしたとき、彼が激怒したことを明かした。また、共和党議員が表と裏で、トランプに関して異なった発言をしているとも語った。例えば、彼らは裏ではトランプの話し方をからかっていたが、2024年米大統領選挙でトランプが勝利すると、表ではトランプに媚びへつらうようになったと言う。

 CBSの番組の司会者が「あなたはMAGAですか」と質問をすると、グリーンは「私はアメリカファースト(米国第一主義者)です」と答えた。その上で、「MAGAはトランプ大統領の言葉です」と述べて、MAGAという言葉を使わず、自分はアメリカファーストであると繰り返して、トランプと距離を開けた。

 グリーンは、トランプに「決別」と「対決」のメッセージを送った。グリーンのMAGAからの決別により、MAGAに「ひび」が入り、彼女の視点に基づいて言えば、「MAGA対アメリカファースト」という新たな対立構図が生まれたのだ。


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