2025年12月8日(月)

トランプ2.0

2025年10月27日

(ronniechua/gettyimages)

 立憲民主党、国民民主党および日本維新の会における3党協議が不発に終わり、自由民主党と維新の間の政策合意が成立したことを受け、10月21日の国会において、高市早苗氏(以下、初出以外敬称および官職名等略)が首相に選出された。高市は、今月27日に来日するドナルド・トランプ米大統領と日米首脳会談に臨む予定である。

 高市は、24日の所信表明演説でトランプと個人的な信頼関係を構築すると語ったが、多くが懸念を抱くように、トランプと良好な関係を築くのは難しい。その際、何がポイントになるのか、以下で述べていこう。

コミュニケーションの入口

 ビジネスであれ、外交であれ、初対面で相手に好印象を残すことは重要だ。初対面の相手に対して送る最初のメッセージは、心理的距離を縮めるのか、建設的なコミュニケーションを促すのか、破壊的なコミュニケーションを回避できるのかを決定し、個人的な信頼関係への構築において大きな比重を占める。

 そこで事前に注目すべきは、トランプの最近の言動である。そこからいくつかの際立った言動を取り挙げて、高市は、関係づくりのきっかけを見出す作業を第一にすべきである。

 例えば、トランプは9月の国連総会での演説の前は、「6つの戦争を終結させた」と繰り返し述べていたが、演説では「7カ月に7つの戦争を終わらせた」と断言した。10月に入り、ガザ地区和平計画の合意がなされると、今度は「8カ月に8つの戦争を終結させた」と強調するようになった。

 トランプは8つの戦争のうち、5つは関税を紛争国にかけたことにより戦争を終わらせ、彼の関税政策が貿易不均衡の是正のみならず、和平をもたらしたという持論を展開し、自分の「手柄」を強調した。

 実際は終結していないのだが、「7カ月に7つの戦争」と「8カ月に8つの戦争」は、元プロデューサーのトランプらしい「キャッチ・コピー」である。

 そこで、高市は日米首脳会談の冒頭で、「あなたの強いリーダーシップの下で、イスラエルとハマスはあなたが作成した和平計画に合意できました。われわれは、あなたの強いリーダーシップに非常に感謝しています」というメッセージを発信するのが効果的だろう。

 そのアイデアは、トランプの閣議を観察すれば有効だろうと考えられる。彼は、トランプ政権はどの政権よりも「透明性が高い」とアピールし、閣議を公開している。

 しかし、その意図は、「透明性」ではなく、スコット・ベッセント財務長官やハワード・ラトニック商務長官等が、トランプを褒め上げる場面を、米国民や、特にMAGA(マガ Make America Great Again:米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)に見せたいのだ。その点において、トランプ政権の公開の閣議は単なる演出にすぎない。

 その閣議で、ベッセントおよびラトニック等の閣僚が使用する言葉が「あなたのリーダーシップの下で」であることに注目したい。「あなたのリーダーシップの下で」には、あなたに忠誠を尽くしていますという意味が含まれている。

 これにトランプの好きな「強い(strong)」という形容詞を加えれば、さらにトランプの心に響くだろう。「あなたは8カ月に8つの戦争を終わらせた平和の構築者だ」と「ダメ押し」をしても良い。


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