2026年3月14日(土)

モノ語り。

2026年3月14日

 大阪難波千日前道具屋筋を歩いていた時のことです。ふと、鉄フライパンが陳列されているのが目に入りました。私は、お肉を焼く時は「ル・クルーゼ」(フランスのキッチンウェアブランド)の「スキレット」(鋳鉄製のフライパン)を使ってきました。とてもおいしく焼くことができるのですが、難点があります。重いのです。そんな中、道具屋筋で出会った鉄フライパンを握った瞬間、その「軽さ」に衝撃を受けました。

「1mmの打出しフライパン」錆止めを焼いた後(写真・鈴木優太 以下同)

 軽さの秘密は「1ミリ・メートル(mm)」という薄さです。1892(明治25)年創業で、開発に携わった調理道具専門店「千田」の千田佑典さんに話を聞きました。

 「鉄フライパンは管理や扱いが大変なのではないかとよく聞かれます。鉄フライパンは、一気に高い火力で焼くことができるので食材の中に水分を閉じ込めることができます。野菜であれば、しゃきしゃき感が残りますし、お肉や餃子、目玉焼きなど多少焦がす料理で使うと抜群においしいです」

 そうなんです。そのおいしさの体験に比べれば、手間などなんてことはありません。「1mmの打出しフライパン」は取扱説明書をA4用紙1枚にまとめています。ポイントは3つです。①「空焼き」。これは錆止めを焼ききるためで、フライパンに少し油をさして、茶色、黒色、青い白銀色になるまで火にかけます。②「油ならし」。少し多めに油を入れてくず野菜を炒めます。③「保管方法」。お湯で洗って水分をふき取り、少し油をさして保管します。

 「洗剤を使ってはいけないのかという質問もよく受けます。臭いなどが気になる場合は使っても大丈夫です。ただ、その後、火にかけて水分を飛ばして、油をさして保管してください。鉄フライパンは、使うたびに油の層ができて、馴染んできます。自分だけのフライパンを育てるようなものなのです」

 だから、プロの料理人は鉄フライパンを選ぶのです。テフロンコーティングされたフライパンだと、コーティングがはがれると廃棄するしかありませんが、千田さんはこう話します。

 「弊社でははがれたテフロンを再度コーティングするサービスも提供しています。品物を売って終わりではなく、その後のメンテナンスまでするのが道具屋の使命です」


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