2025年12月31日(水)

モノ語り。

2025年12月31日

 京都の食といえば、和食をイメージされる方が多いと思いますが、実は洋食文化が盛んで、全国の中でパンの消費量も多いのです。今回紹介するのは、京都・越後家多齢堂の「加壽天以良(カステイラ)」です。カステイラといえば、長崎のイメージですが、京都のカステイラもすごいのです。社長の中川浩さんにお話を聞きました。

越後家多齢堂 「加壽天以良(カステイラ)」(写真・鈴木優太以下同)

 なぜ京都なのにお店の名前は「越後」なのか。そして、「多齢」とはどういう意味なのでしょうか。

 「創業者が江戸末期の安政時代に、現在の三越の前身である『越後屋』で働いていたそうです。そして、長崎に今で言う〝出張〟した際に、オランダ人からカステイラの製法を教えてもらったと伝えられています。昔はカステイラのような卵を使った食品は貴重で、精をつけるということでもあるので『薬菓子』と呼ばれていました。『多齢』には、健康で長生きしてほしいという思いが込められています」

 越後家多齢堂のカステイラといえば、「やわらかい、ふわっとした軽さ」にあります。

 「カステイラの材料は、卵、小麦粉、砂糖、水飴です。卵は京都の福知山産と鹿児島産のものをブレンドしています。父親から私の代になって、この組み合わせが最も良いという結論にいたりました。水飴についても2種類をブレンドしています。味を濃くするのと、艶出しのためにそうしています」

 伝統を大事にしながらも、革新も続けているのです。これこそ、老舗の真骨頂といえるでしょう。

 やわらかさの秘密には、もう一つ大きな理由があります。それは日持ちしないことです。


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