2026年6月13日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2026年6月3日

 五月晴れの京都を歩いていると、青もみじの静けさとは裏腹に、世界では巨大な地殻変動が始まっていることを痛感する。

 世間は「AI革命」に熱狂している。

 株式市場ではNVIDIA一色と言ってよい。生成AI、GPU、半導体、データセンター――そんな言葉が毎日のように飛び交う。先週末のエヌビディア決算は、その熱狂が単なる一過性のブームではないことを市場に突きつけた。

 それまで投資家の胸の奥には不安があった。

「AI銘柄は買われ過ぎではないか」
「NVIDIA一社依存のバブルではないか」
「そろそろ大きな調整が来るのではないか」

 しかし決算発表後、市場は崩れなかった。むしろ買い上がった。これは重要である。もしAI相場が終わりかけていたなら、好決算でも「材料出尽くし」で売られたはずだ。

 だが、今回は違った。

 市場は、AI革命がまだ初期段階にあると判断したのである。私はこの瞬間、AI革命は本格的な第二幕に入ったと感じた。

 NVIDIA決算後も市場が崩れなかった意味は大きい。

 それは投資家たちが、AI革命が単なる半導体特需ではなく、“文明インフラの総入れ替え”に入ったことを直感し始めたからである。

 だから、私はここからがAI革命の本当の第二幕だと見たのだ。

 多くの人々はAI革命を「ソフトウェア革命」や「半導体革命」として見ている。しかし、長年レアメタルの現場を歩いてきた山師として言えば、現実は少し違う。

 これは、「電力と資源の革命」なのである。そして、その中心に存在するのがレアメタルだ。

 私は最近、「AIはレアメタルを爆食する時代に入った」と語っている。今回は、その意味をできるだけ分かりやすく説明してみたい。

(MargaretClavell/gettyimages)

AIの正体は「巨大電力消費装置」である

 ChatGPTに象徴される生成AIは、一見するとスマートな情報サービスに見える。しかし、その裏側では想像を絶する計算が行われている。その中心にあるのがGPUである。

 GPUとはGraphics Processing Unitの略で、もともとはゲーム画像処理用に開発された半導体だった。ところがAI時代になると、このGPUが並列計算に圧倒的な強みを持つことが判明した。NVIDIAが世界覇権を握った理由もそこにある。

 だが、GPUは猛烈に電力を消費する。AIサーバーは、もはや「計算機」というより、“巨大な発熱体”なのである。

 そのためGPUの周囲にはHBM、高帯域メモリが積層され、冷却装置が並び、超高速配線が張り巡らされる。ここで初めて、レアメタルの世界が登場する。

タングステンが再び脚光を浴びる理由

 半導体の世界では、タングステンの重要性が再び高まっている。理由は単純だ。熱に強いからである。

 AI半導体は異常な熱を発生させる。普通の金属では耐えられない。そこで微細配線や接点材料として、耐熱性に優れるタングステンが必要になる。

 タングステンは「古い金属」と思われがちだ。超硬工具、切削工具、鉱山工具――そんな重厚長大型産業の象徴だった。しかし今、AI革命によって、タングステンは再び「先端産業の核心」に戻りつつある。

 私は以前、京都の鐘打鉱山や山口県の喜和田鉱山について書いた。閉山した鉱山の話は、一見すると過去の産業遺産に見えるかもしれない。

 だが、そうではない。日本のタングステン史は、AI時代に再び意味を持ち始めているのである。


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