ホルムズ海峡をめぐり米国とイランが再び本格交戦に突入する懸念が高まった。トランプ大統領は「停戦は終わった」とうそぶき、イラン指導部を「邪悪なくず」と切り捨てた。
イランは前最高指導者ハメネイ師の葬儀の中、船舶への攻撃を繰り返し、米国が報復するという負の連鎖が続く。大統領の「気まぐれ」とイランの「過信」が意味なき戦いを生もうとしている。
「もう関わりたくない」と本音
6月17日の覚書調印からわずか3週間。なぜこうした事態に陥っているのか。発端はイランが6月25日、海峡を通過するシンガポール船籍の貨物船を無人機などで攻撃したことだ。これに米国が反応、26、27日両日にイランの無人機貯蔵施設などを爆撃、イランもバーレーン、クウエートにある米軍基地に報復したと発表した。
イランは7月7日にも海峡のオマーン領海を通過していた商船3隻を攻撃するなどその後も攻撃を続けた。米中央軍がこれに反撃、この1週間でドローンやミサイル貯蔵基地など310カ所を爆撃した。イランもクウエート、バーレーン、ヨルダン、カタールの米軍基地を報復に報復攻撃を加え、「ホルムズ海峡を封鎖する」と表明、事実上、停戦に向けた覚書は破綻した。
トルコでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席していたトランプ大統領はイランの指導者たちを「本当に邪悪な連中だ。くずだ。(和平)交渉は時間の無駄だ」と罵倒した。大統領は「もう連中に関わりたくない」とイランの異常な執着と粘りに思わず本音が漏れた格好。うまくいかないと途中で匙を投げる悪い癖が顔を出した。
ハメネイ師らイラン指導層約40人は開戦時の米国とイスラエルの攻撃で殺害されて世代交代。トランプ大統領はイランの新指導部について、「事実上の体制転換だ」「合理的な連中で賢い」などと評価。覚書をめぐる協議に関しても「交渉は順調」と楽観的な見通しを示してきた。2週間前には「中東の3000年の歴史の中で初めて平和が到来しようとしている」とまで言い切った。
こうした見方が一気に「くず」に変わった。大統領の決断はしばしば、綿密に協議された上ではなく、「直感」に基づいて下されるケースも多い。それが「予測不能」と言われる所以だが、「気まぐれ」とも揶揄されてきた。イラン戦争も昨年6月の「12日間戦争」で核関連施設を完全に破壊したと言いながら、イスラエルのネタニヤフ首相に誘いこまれ「巨大な脅威が迫っている」という口実で攻撃に踏み切った。
