トランプをぼろ儲けさせただけ
トランプ大統領は戦争の目標もくるくる変えた。開戦時にはネタニヤフ首相の「ハメネイ師を抹殺すれば住民の蜂起でイランの体制が転覆する」(識者)という甘言に乗って失敗。その後も「文明を破壊するような」圧倒的な軍事力で屈服させようとしたがうまくいかなかった。最後は交渉による解決を目指して覚書に署名したが、これも失敗した。
何をやってもイランに勝つことはできず、「戦略的な袋小路」(ハース元米大統領顧問)に入っている状況。米国がイランを攻撃すればするほど、イランによるペルシャ湾岸の石油インフラ施設への攻撃という報復を招き、これを阻止することができないのだ。大きなジレンマだと言える。
「トランプは結局、海上封鎖に戻ることになるだろう。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続き、世界経済を不安定化させる。手を出す必要がなかったイランにうっかり手を突っ込んだツケだ。トランプのせいで世界は大迷惑だ。本人は戦争中の株取引で20億ドル以上稼いだ。これではトランプをぼろ儲けさせただけではないか」(ベイルート筋)。
もっともトランプ大統領にとって今は中間選挙までの「時間稼ぎ」という見方もある。中間選挙で大統領の与党共和党が勝っても負けても選挙が過ぎたらイランに再び大攻撃を仕掛けるハラだというのだ。中間選挙が終われば、再選の心配がない大統領が心おきなくイランを攻撃できるというわけだ。
「自負」は「過信」に変わりかねない
問題はイランの一連の船舶攻撃が戦略的な計画の一環なのか、あるいは革命防衛隊の一部の跳ね返りの行動なのかだ。7月10日付のニューヨーク・タイムズによると、イランの交渉担当者が米側に対し、船舶へのドローン攻撃は「革命防衛隊の一部跳ね上がりの行動」だったと述べた。
イランは数日内に、ホルムズ海峡のあらゆるルートを開放し、一切の攻撃を停止する、との発表を行う見通しだという。テヘランからの報道によると、4日からのハメネイ師の葬儀には約4300万人が参列したという。国民の半分近くが同師の殺害を悲しみ、米国とイスラエルへの憎悪の炎を燃やしたのは想像に難くない。
最高指導者の葬儀という高揚感や国民の激しい怒り。和平協議に反発する革命防衛隊の一部の跳ね上がりグループがこうした雰囲気に触発され、船舶攻撃を実行したとしても不思議ではない。
