■今回の一冊■
書名 1929
筆者 Andrew Ross Sorkin
出版社 Viking
アメリカの株式相場が暴落して銀行が相次ぎ倒産し全米に失業者が溢れた。1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と同月29日の「暗黒の火曜日」と呼ばれるウォール街でのパニックと、その後に続いた大恐慌の中で、金融界や政界の大物たち、相場師たち、そして政策当局はどのように危機に立ち向かったのか。金融や経済に関する専門的な議論は極力おさえ、数々の人間ドラマを積み重ねて危機の本質をあぶり出すノンフィクションだ。
著者のアンドリュー・ロス・ソーキンは、前作『TOO BIG TO FAIL』では2008年のリーマン・ショックの舞台裏を描きベストセラー作家となった。ニューヨーク・タイムズの有名なジャーナリストだ。
前作が話題になった時にも、本コラム(2009年12月2日、「モルガンに軽んじられた三菱UFJ」)でとりあげた。前作はその後、『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』と題して日本でも翻訳が出版された。
リーマン・ショックで名をあげたコラムニストが100年前の大恐慌をテーマに本を書いたのだから売れないわけがない。ニューヨーク・タイムズ紙の2025年11月2日付ベストセラー週間ランキングで、単行本ノンフィクション部門に第2位に初登場した。今年1月には3週連続で1位を獲得するなど、今年3月にかけて22週にわたりベストセラーリスト入りした。最近でも、6月14日付ランキングで9位と、久しぶりに復活ランクインした。
本書が売れたのは書き手の知名度だけではないだろう。AI(人工知能)など新しいテクノロジーの進化をはやしてアメリカの株式相場が最高値圏にある点が大きい。株価が暴落するリスクがあるのではないか、と多くのアメリカ人が不安に思い歴史に教訓を求めたくなっているのは想像に難くない。
本書の巻頭には登場人物のリストがある。数えると約100人にのぼる。誰がいつどこで何をしたか、という細かなエピソードを拾い集めており、読み応えがある。
